

急速充電器の出力が50kWでも、あなたのEVは最大30kWしか受け入れられないかもしれません。
kW(キロワット)とkWh(キロワットアワー)は、どちらも電気に関わる単位ですが、表しているものがまったく異なります。この区別が曖昧なまま電気自動車(EV)に乗っていると、充電計画を誤ったり電気代を余計に払ったりするリスクがあります。
まず kW(キロワット) は、ある瞬間にどれだけの電気が流れているかを表す「電力」の単位です。1kW=1,000Wで、家庭にある電化製品の消費電力と同じ「大きさ・強さ」を示します。ドライヤーで例えると、1,200Wのドライヤーは1.2kWということです。
次に kWh(キロワットアワー) は、一定時間にわたって使用・蓄積された電気の「量」を示す「電力量」の単位です。「h」はhour(時間)のことで、1kWの電力を1時間使い続けたときの総量が1kWhになります。1.2kWのドライヤーを1時間動かすと、消費電力は1.2kWhです。
つまり、kWは「水道の蛇口の太さ」、kWhは「バケツに溜まった水の量」と考えると整理しやすいです。
| 単位 | 読み方 | 意味 | EVでの用途 |
|---|---|---|---|
| kW | キロワット | 電力の大きさ(瞬間値) | 充電器の出力・モーターの最高出力 |
| kWh | キロワットアワー | 電力量(累積値) | バッテリー容量・使用した電気の量 |
kWは「速さ」、kWhは「量」と覚えておけばOKです。
自動車のカタログを見ると、「最高出力150kW」「バッテリー容量66kWh」といった表記が並んでいます。この2つの数字はまったく別のことを指しています。前者はモーターの性能(加速力)、後者はバッテリーにどれだけの電気を溜められるかを示します。混同すると「バッテリーが大きいほど速い」という誤解につながるので注意が必要です。
なお、kWの「W」が大文字なのは、蒸気機関の改良で知られるスコットランドの発明家ジェームズ・ワット(James Watt)に由来する人名単位だからです。単位に人名が使われているときは頭文字を大文字にするという国際的なルールがあります。
kWとkWhの違いの詳細(Myプラゴ)- kWとkWhの計算例や、EVでの具体的な使われ方を解説しています。
kWとkWhの違いを理解すると、充電時間を自分で計算できるようになります。これが分かると、外出前にどの充電器をどれくらい使えばいいかをスマートに判断できます。
計算式はシンプルです。
> 充電時間(時間)= バッテリー容量(kWh)÷ 充電器の出力(kW)
例えば、日産アリア(B6グレード・バッテリー容量66kWh)を充電する場合、自宅の普通充電器(3kW)では、66kWh÷3kW=約22時間かかります。6kWの充電器なら約11時間です。一方、高速道路のSA・PAに設置されている90kWの急速充電器を使えば、66kWh÷90kW=約44分で計算上は満充電になります。
もう一つ実例を挙げると、日産サクラ(バッテリー容量20kWh)を3kWの普通充電器で充電すると、20kWh÷3kW=約6.7時間です。軽EVは容量が小さいぶん、普通充電でも短時間で満充電にできることがわかります。
ただし、計算通りにならないケースがあります。重要です。
急速充電では、バッテリーの充電率(SOC)が80%を超えると充電速度が大幅に落ちます。これはバッテリー保護のための制御で、「満タンに近い水槽に水を流し込もうとすると自然に勢いが弱まる」イメージです。また、車種ごとに急速充電の「受入上限kW」が異なるため、充電器の出力が高くても車側の上限でキャップされます。
充電器の出力kWが高くても、車側の受入上限を超えることはできません。それが原則です。「充電器が50kWなのに思ったより遅い」と感じたことがある場合は、車側の上限に達していた可能性があります。出発前に自分の車の急速充電受入上限を確認しておくと、充電プランを無駄なく立てられます。
充電器の出力が50kWでも実際には50kWで充電できない理由(EVsmartブログ)- 車側の受入制限について詳しく説明されています。
バッテリー容量(kWh)の数値が大きいほど、一度の充電で走れる距離が長くなります。これはEV選びの基本中の基本です。ただし、ここで一つ落とし穴があります。
カタログに記載されているEVの航続距離は、実際の走行距離の7割程度が目安と言われています。カタログ値はWLTC(国際的な統一試験法)という一定条件下で測定された値のため、現実の走行環境と完全には一致しません。
たとえば日産サクラのカタログ航続距離は180kmですが、実際の走行可能距離は満充電でおよそ120km程度とされています。冬場に暖房をフル稼働させた場合、さらに2〜3割落ちることもあります。冬は厳しいですね。
リチウムイオンバッテリーは低温に弱く、気温が下がると化学反応が鈍くなり、電池の効率が下がります。EVスマートブログの情報によると、冬は電費が一般的に約20〜30%悪化するとされており、外気温0度で暖房をつけっぱなしにすると夏季比で約2〜3割の電費悪化が起きるというデータもあります。
| 季節 | 電費の目安(例:日産アリア) | 航続距離の変化 |
|------|--------------------------|--------------|
| 春・秋 | 5〜6km/kWh | カタログ値に近い |
| 夏(エアコン使用時)| 4.5km/kWh前後 | 約10〜15%減 |
| 冬(暖房使用時)| 4.0km/kWh前後 | 約20〜30%減 |
つまり、kWhの容量が大きいEVを選ぶことは「冬の航続距離低下に対する保険」にもなるということです。
これは使えそうです。たとえば66kWhの大容量バッテリーを積んだEVなら、冬に30%電費が落ちても実質46kWh相当分は走れる計算になります。一方、20kWhの軽EVで同じ状況に陥ると、実質使える容量は14kWh程度に縮んでしまいます。購入前にカタログのkWh数値を確認するだけでなく、「冬の実走行距離」も意識して選ぶと後悔が少なくなります。
電費の向上には急発進・急加速を避け、ゆっくりとしたアクセル操作をすることが有効です。ガソリン車とは異なり、EVは低速域で最も効率よくエネルギーを使う特性があるため、市街地走行のほうが電費が良くなる場合もあります。
電気自動車の航続距離まとめ(EVDAYS by 東京電力EP)- 車種別の航続距離一覧と「カタログ値の7割」という実態についての解説があります。
「EVは本当にガソリン車より安いのか?」という疑問は、kWとkWhの理解があれば自分で答えを出せます。
電気代の計算式は以下のとおりです。
> 充電1回の電気代(円)= バッテリー容量(kWh)× 電気料金単価(円/kWh)
全国家庭電気製品公正取引協議会が公表している電気代の目安単価は 1kWhあたり31円(2024年時点)です。この単価を使った具体例を見てみましょう。
さらに月間の走行コストを比較すると、EVの優位性がよくわかります。電費6km/kWhの車で月1,000km走った場合、必要な電力量は約167kWhです。単価31円で計算すると、月の充電コストは約5,170円となります。
ガソリン車(燃費15km/L、ガソリン単価180円/L)で同じ1,000km走ると、ガソリン代は約12,000円です。EVとの差額は月に約6,800円、年間にすると約8万円以上の節約になる計算です。
ただし、注意すべき点もあります。夜間の電気料金プランを活用すると、1kWhあたり20円以下になる場合があり、充電コストをさらに圧縮できます。一方で、外出先の急速充電器は1kWhあたり40〜50円程度かかるケースもあり、自宅充電の倍以上になることも珍しくありません。これは有料です。
コスト管理のポイントは、kWhという単位を軸に、充電場所ごとの単価を把握しておくことにあります。自宅充電の比率を高める、深夜の格安プランを使うといった工夫で、年間のランニングコストを大きく下げることが可能です。
夜間プランへの切り替えを検討する場合は、電力会社の公式サイトや「エネチェンジ」などの電気料金比較サービスで試算すると、1アクションで確認できます。
「kWもkWhも英字が並んでいてどうしてもピンとこない」という方には、ガソリン車の感覚に置き換えるアプローチが有効です。これは意外と知られていない整理方法です。
実は、ガソリン車のスペック表にも、kWとkWhにあたる概念がすでに存在しています。
| EV(電気自動車)| ガソリン車 | 意味 |
|----------------|-----------|------|
| モーター最高出力(kW)| エンジン最高出力(kW・PS)| パワー・加速力の大きさ |
| バッテリー容量(kWh)| 燃料タンク容量(L)| 走れる燃料・電気の量 |
| 電費(km/kWh)| 燃費(km/L)| 1単位あたりの走行距離 |
kWとkWhの違いを意識していなかったとしても、ガソリン車で「エンジン出力が150馬力で、タンクが50L入る」という感覚は自然と持っているはずです。それと同じ構造です。
ガソリン車の「エンジン出力(PS/kW)」はモーターの「最高出力kW」に相当し、「タンク容量(L)」はEVの「バッテリー容量kWh」に対応します。そして「燃費(km/L)」はEVでは「電費(km/kWh)」となります。
つまり kWhが基本です。kWhはガソリン車でいう「タンクに入ったガソリンの量」であり、kWは「エンジンがどれだけのパワーを発揮できるか」に対応します。
ここで一点、ガソリン車と根本的に異なる特徴があります。ガソリン車のタンクは「容量が大きいほど航続距離が長い」ですが、EVのkWhはさらに「充電器の出力kWによって補充速度が変わる」という点が加わります。ガソリンスタンドはどこで入れても同じ速さで満タンにできますが、EVの場合は充電器のkWによって「補充速度」が大きく異なります。この点だけがガソリン車との決定的な違いです。
また、ガソリン車では馬力(PS)を使い慣れている方も多いでしょう。kWとPSの換算は、「kW × 1.36 ≈ PS(馬力)」です。たとえば最高出力150kWのEVモーターは、約204PS相当になります。ガソリン車に慣れている方なら、この換算を使うとEVのモーター出力も直感的に把握しやすくなります。
EVカタログのkW・kWhの意味(WEB CARTOP)- モーター出力のkWと馬力換算、バッテリー容量kWhの関係をわかりやすく解説しています。