
トヨタのハリアーは、1997年に初代モデルが登場して以来、「高級クロスオーバーSUV」の先駆けとして日本の自動車市場に新たなカテゴリーを確立してきました。当時はSUVといえば本格的なオフロード性能を持つランドクルーザーのようなモデルが主流でしたが、ハリアーは都会的なスタイルと乗用車並みの乗り心地を両立させた新しいタイプのSUVとして登場しました。
現行モデルは2020年から販売されている4代目となります。初代から受け継がれてきた都会的なスタイルを踏襲しながらも、シンプルかつエレガントなクーペスタイルに刷新され、より洗練されたデザインへと進化しています。TNGAと呼ばれるトヨタの新しいプラットフォームを採用することで、ボディの高剛性化と低重心化を実現し、走行性能も大幅に向上しました。
ハリアーの名前の由来は、「ハリアー(Harrier)」という猛禽類の名前からきています。鋭い視力と素早い動きを持つこの鳥のように、俊敏で力強い走りを表現しています。このネーミングからも、ただのSUVではなく、プレミアム感と走行性能を兼ね備えた特別な存在であることが伝わってきます。
ハリアーの最大の魅力のひとつは、その高級感あふれるインテリアです。特に上位グレードのZレザーパッケージでは、ソファを思わせる上質な本革シートが標準装備されています。内装色はブラックとブラウンの2種類から選択可能で、特にブラウン内装は、センターコンソールやドアスイッチベースパネルなどにグレーウッド調の加飾が施されており、インパネやドアトリムなど各所にサテンブラウンのパイピングオーナメントが備わるなど、デザイン性の高さが感じられる仕立てとなっています。
さらに、Zグレードでは上品なグレーの内装もオプション設定されており、センターコンソールやドアスイッチパネルにはアイボリーの加飾が施され、室内を華やかに彩ります。プラグインハイブリッド車では、インパネからドアトリムへ金属メッシュ質感のダークレッドパイピングオーナメントを採用するなど、さらにプレミアム感が高められています。
特筆すべきは、トヨタ車初となる「調光パノラマルーフ」の採用です。前席中心に後席の頭上まで覆う大きな調光ガラスを用いることで、調光時には障子越しのような柔らかい光が差し込む空間を楽しむことができます。これにより、季節や時間帯を問わず、快適な室内環境を実現しています。
フルオートエアコンは左右独立温度コントロールタイプで、人が乗っていない席には空調を抑制する機能も備えています。ガソリン車では前席のみ、プラグインハイブリッド車・ハイブリッド車は運転席のみに集中して送風することもでき、エネルギー効率と快適性を両立させています。
ラゲージスペースもゴルフバッグ3つが収納可能な広さを確保し、スライド式のデッキボックスを備えることで、デッキボードの下にも収納スペースを用意。プラグインハイブリッド車には、充電ケーブル用の専用収納スペースも設置されています。
このように、ハリアーのインテリアは豊富な機能と細部に至るまで贅沢な仕立てが施されており、車内で気持ち良く心ゆくまでくつろげるよう設計されています。まさにプレミアムモデルと呼ぶにふさわしい仕上がりといえるでしょう。
ハリアーのエクステリアデザインは、一目見ただけでその高級感と存在感を主張する洗練されたものとなっています。現行モデルでは、クーペのような美しいルーフラインが特徴的で、SUVでありながらスポーティで流麗なシルエットを実現しています。
フロントフェイスは、特に上位グレードのZとGでは2本のL字が発光する印象深いLEDヘッドランプを採用。このシャープな光の表情が、ハリアーの先進的なイメージを強調しています。グリルデザインも洗練されており、控えめながらも存在感のあるデザインとなっています。
サイドビューでは、なだらかに流れるルーフラインと力強いショルダーラインが調和し、動きのあるデザインを生み出しています。ホイールは18インチから20インチまで用意され、特別仕様車ではブラック塗装の切削光輝18インチアルミホイールなど、足元からの高級感も演出しています。
リアデザインは、横一文字に伸びるテールランプが特徴的で、夜間の点灯時には独自の光の表情を見せます。このデザインは先代モデルから受け継がれた要素でありながら、より洗練された形に進化しています。
ボディサイズは全長×全幅×全高が4740mm×1855mm×1660mmとなっており、都市部での取り回しやすさと室内の広さを両立させています。このサイズ感は、日本の道路事情にも適しており、高級SUVとしての存在感を持ちながらも、日常使いのしやすさも考慮されています。
カラーバリエーションも豊富で、プレミアムSUVにふさわしい深みのあるカラーが揃っています。特に人気の高いホワイトパールクリスタルシャインやプレシャスブラックパールなどのパール系カラーは、光の当たり方によって表情が変わり、ハリアーの造形美をより際立たせています。
ハリアーは見た目の高級感だけでなく、走行性能においても高級車としての質の高さを実現しています。現行モデルでは、TNGAプラットフォーム(GA-K)の採用により、ボディの高剛性化・低重心化が図られ、走行安定性と乗り心地が大幅に向上しました。
パワートレインは、2.0リッターガソリンエンジン、2.5リッターハイブリッド、そして2022年の一部改良で追加された2.5リッターPHEV(プラグインハイブリッド)と、多彩なラインナップを揃えています。特にハイブリッドモデルは、静粛性と燃費性能の高さで評価が高く、高級車に求められる滑らかな走りと環境性能を両立しています。
駆動方式はFFと4WD(E-Four)を用意し、様々なニーズや使用環境に対応。特にE-Fourシステムは、雪道や雨の日の走行安定性を高めながらも、通常走行時には燃費を優先する制御を行うなど、賢く効率的な四輪駆動システムとなっています。
サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット式、リアにダブルウィッシュボーン式を採用。この組み合わせにより、路面からの衝撃を効果的に吸収しながらも、コーナリング時の安定性を確保しています。特に高級SUVに求められる「しなやかさ」と「安定感」のバランスが絶妙で、長距離ドライブでも疲れにくい乗り心地を実現しています。
ブレーキシステムも高性能で、制動力と操作フィールのバランスが取れており、高級車に相応しい安心感のある制動性能を発揮します。また、最新の電子制御技術により、急ブレーキ時でも車体の姿勢を安定させる各種制御システムが充実しています。
静粛性も高級車として重要なポイントですが、ハリアーでは徹底した防音・遮音対策が施されています。エンジンノイズや風切り音、路面からの音を最小限に抑える工夫が随所に見られ、室内は常に静かで落ち着いた空間が保たれています。
さらに、ドライブモードセレクトにより、エコ、ノーマル、スポーツの各モードを選択可能。ドライバーの気分や走行シーンに合わせて、エンジンやステアリングの特性を変更することができます。特にスポーツモードでは、アクセルレスポンスが向上し、より俊敏な走りを楽しむことができます。
ハリアーは日本のプレミアムSUV市場において確固たる地位を築いていますが、国内外の他の高級SUVとどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、同クラスの高級SUVと比較しながら、ハリアーの特徴を分析していきます。
まず、日本国内のプレミアムSUV市場では、レクサスNXやマツダCX-5/CX-60の上位グレード、日産のエクストレイル/ムラーノなどがハリアーのライバルとして挙げられます。特にレクサスNXはトヨタ系列のプレミアムブランドとして、ハリアーよりもさらに上のクラスに位置づけられていますが、価格差を考えると、ハリアーはコストパフォーマンスに優れた選択肢といえるでしょう。
海外のプレミアムSUVと比較すると、メルセデス・ベンツGLCやBMW X3、アウディQ5などが同クラスとなります。これらの欧州プレミアムブランドと比べると、ハリアーは価格面で優位性があり、装備の充実度も引けを取りません。特に日本の道路事情や気候に合わせた設計がなされている点は、日本のユーザーにとって大きなメリットです。
表:ハリアーと主要プレミアムSUVの比較
モデル | 価格帯 | エンジン | 特徴 |
---|---|---|---|
トヨタ ハリアー | 300万円~500万円 | 2.0L/2.5Lハイブリッド/PHEV | 高級感と実用性のバランス、調光パノラマルーフ |
レクサス NX | 500万円~800万円 | 2.4L/2.5Lハイブリッド | 上質な内装、先進安全装備の充実 |
メルセデス・ベンツ GLC | 600万円~1000万円 | 2.0L/3.0L | 洗練された走行性能、ブランド力 |
BMW X3 | 600万円~900万円 | 2.0L/3.0L | スポーティな走り、先進的なコックピット |
アウディ Q5 | 600万円~900万円 | 2.0L | 先進的なデザイン、quattro四輪駆動 |
アメリカ市場では、ハリアーはレクサスRXとして販売されており、北米のプレミアムSUV市場で高い人気を誇っています。日本のハリアーとレクサスRXは基本設計は共通していますが、内外装のデザインや装備内容に違いがあります。
また、ハリアーはオフロード性能を重視したSUVというよりは、都市型のクロスオーバーSUVとして位置づけられています。本格的なオフロード走行を想定するなら、同じトヨタのランドクルーザーやランドローバー・ディスカバリーなどの方が適しているでしょう。しかし、日常使いの快適性や高級感を重視するユーザーにとっては、ハリアーの洗練された乗り心地と上質な室内空間は大きな魅力となっています。
価格帯を考慮すると、ハリアーは「手の届くプレミアム」として、欧州高級ブランドほどの価格ではないものの、十分な高級感と機能性を備えた絶妙なポジションにあると言えるでしょう。特に日本のユーザーにとっては、アフターサービスの充実度や信頼性の高さも含め、バランスの取れた選択肢となっています。
ハリアーには通常のグレード展開に加えて、定期的に特別仕様車が発売されており、さらなる高級感や個性を求めるユーザーに向けた選択肢が用意されています。これらの特別仕様車は、通常モデルをベースにしながらも、専用の内外装や装備を追加することで、より特別感のある仕様となっています。
2016年には「Style ASH」という特別仕様車が登場しました。この特別仕様車は、ウルトラスエードと合成皮革を組み合わせたコンビシートを装備し、ブラック塗装の切削光輝18インチアルミホイールを特別装備として採用。内装と外装の両面で通常モデルとの差別化を図り、より洗練された印象を与える仕上がりとなっていました。
また、2022年には「Style BLUEISH」という特別仕様車も登場。この特別モデルでは、その名の通り青を基調としたカラーコーディネートが特徴で、内装には専用のブルーステッチが施され、外装にも専用のカラーが設定されました。こうした色使いの工夫により、スポーティさと高級感を両立させた個性的なモデルとなっています。
さらに、プラグインハイブリッド車の登場に合わせて設定された特別仕様も注目に値します。プラグインハイブリッド車の最上級グレードでは、インパネからドアトリムへ金属メッシュ質感のダークレッドパイピングオーナメントを採用するなど、電動化モデルならではの先進的かつ高級感のあるデザインが施されています。
特別仕様車の魅力は、限定感だけでなく、通常モデルでは選択できない組み合わせの装備や内外装が設定されている点にあります。例えば、特定のボディカラーと内装色の組み合わせや、専用デザインのホイール、通常はオプションとなる装備の標準化など、パッケージとしての魅力が高められています。
こうした特別仕様車は、モデルライフの中期や後期に投入されることが多く、商品の鮮度を保つ役割も担っています。また、特別仕様車は生産台数が限定されることも多いため、将来的な希少価値も期待できる場合があります。
ハリアーの特別仕様車は、すでに高い水準にある通常モデルの高級感をさらに高め、より個性的な一台を求めるユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。定期的に新しい特別仕様車が登場するため、購入を検討する際には最新の情報をチェックすることをおすすめします。
特別仕様車「Style ASH」についての詳細情報
ハリアーは今後も、時代のニーズに合わせた特別仕様車を展開していくことが予想され、高級SUVとしての地位をさらに強固なものにしていくでしょう。