

4WDだと思って雪道に乗り込んだのに、スリップしてから4WDになる仕様だったとわかり、坂道で立ち往生した人が続出しています。
アクティブトルクコントロール4WDは、トヨタが採用している電子制御式の4WDシステムです。基本的な考え方はシンプルで、「普段はFF(前輪駆動)、必要なときだけ自動で4WDに切り替える」というスタンバイ型の4WDシステムです。
このシステムの心臓部は、後輪に駆動力を伝えるための多板クラッチです。車両に搭載されたセンサーが、車速・操舵角・前後輪の回転差・アクセル開度などのデータをリアルタイムで読み取り、ECU(エンジンコントロールユニット)が「今4WDが必要かどうか」を判断します。必要と判断した瞬間に多板クラッチを締結し、後輪にトルクを送る仕組みです。
トルク配分は「前輪100:後輪0」〜「前輪50:後輪50」の間で自動的に変化します。通常の直線走行や高速クルーズではほぼFF状態で走り、発進時・コーナリング時・悪路検知時に自動で4WD状態へ移行します。
つまり、常時4輪に駆動力を送り続けるフルタイム4WDとは根本的に異なります。
従来の「ビスカスカップリング」式のパッシブ型4WDは、前後輪に回転差が生じてから(つまり実際にスリップしてから)機械的に4WDになる仕組みでした。一方、アクティブトルクコントロール4WDはセンサーと電子制御により、スリップが起きる前の段階で予測的に4WDに切り替えることができます。これはパッシブ型と比べて大きな進化であり、路面の変化への対応が格段に速いのが特長です。
ただし、電子制御でも物理的なクラッチの締結には若干のタイムラグが存在します。0コンマ数秒のレベルとはいえ、「完全にスリップしてから介入する」よりずっと早い。これが条件です。
コンパクトカーや普及グレードのミニバンに多く採用されており、システムが小型・軽量で製造コストを抑えやすいのもメリットです。差動制限機構(LSDなど)を持つフルタイム4WDと比べると構造がシンプルで、車体への搭載自由度も高くなっています。
【参考】トヨタ公式FAQ:4WD(フルタイム・パートタイム・アクティブトルクコントロール4WD)の解説
アクティブトルクコントロール4WDは、主にトヨタのガソリン車に採用されているシステムです。現行モデルで搭載されている代表車種を確認しておきましょう。
| カテゴリ | 車種名 | 備考 |
|---|---|---|
| コンパクトカー | ヤリス(ガソリン車) | ハイブリッド車はE-Four |
| セダン | カローラ アクシオ | ガソリン車のみ4WD設定 |
| ワゴン | カローラ フィールダー | ガソリン車のみ4WD設定 |
旧世代車では、旧型ノア・旧型ヴォクシー(3代目)、旧型アルファード(3代目)、旧型シエンタ(2代目)、エスクァイア、カローラスポーツ(一部改良前)などにも採用されていました。現行ラインアップでは後継の「ダイナミックトルクコントロール4WD」へ移行したモデルが多い点に注意が必要です。
ここで重要なのが、同じ車種でも「エンジンの種類」によって4WDシステムが違う、という点です。ヤリスを例に取ると、ガソリン車のアクティブトルクコントロール4WDに対し、ハイブリッド車には電気式4WDシステム「E-Four」が搭載されています。外見上はほぼ同じ車でも、4WDシステムの性格はまったく別物です。これは意外ですね。
中古車で旧型ノアや旧型アルファードを探している場合も、ガソリン4WD車であればアクティブトルクコントロール4WDが採用されています。購入前に「どの世代の、どのエンジングレードか」を必ず確認することが条件です。
またカローラアクシオのカタログ上の新車価格は、2WDが約168万円・4WDが約188万円と、4WDグレードには約20万円の上乗せがあります(2019年時点)。中古車市場でも同様に4WD車は価格がやや高い傾向にあります。
【参考】コロナ岩手トヨタ:アクティブトルクコントロール4WD設定車種の一覧
アクティブトルクコントロール4WDは、同じトヨタ製4WDシステムの中でどのような立ち位置にあるのでしょうか?
まず、最も混同しやすいのが「ダイナミックトルクコントロール4WD」です。どちらも電子制御でFFと4WDを切り替えるスタンバイ型という点は共通しています。大きな違いは「予測制御の精度」にあります。
アクティブトルクコントロール4WDは、主に「発進・加速・コーナリング・悪路」といった状況を検知してから4WD制御を行います。一方、ダイナミックトルクコントロール4WDは車速・舵角・横加速度などのより多くのデータを組み合わせて「ドライバーの意図する走行軌跡」を予測し、先読み制御でトルクを配分します。つまり、ダイナミックトルクコントロール4WDはアクティブトルクコントロール4WDの進化版と位置づけられています。
次に、ハイブリッド車専用の「E-Four(電気式4WD)」との違いも重要です。E-Fourはリヤモーターで後輪を独立駆動するため、物理的なクラッチ締結が不要です。電気モーターの応答速度はクラッチ式より大幅に速く、0コンマ数秒のタイムラグすら実質ゼロに近い形で4WD制御ができます。雪道での発進性能という観点では、E-Fourのほうが有利な場面があります。
本格的な悪路走破性を求めるならフルタイム4WDやパートタイム4WDが依然として強く、ランドクルーザーやハイラックスが採用しているのはそのためです。アクティブトルクコントロール4WDは「街乗り・雪道対応・燃費バランス」を求めるユーザー向けのシステムです。これが原則です。
🔍 各4WDシステムの特性をざっくり比較すると以下の通りです。
| システム名 | 得意な場面 | 特徴 |
|---|---|---|
| アクティブトルクコントロール4WD | 雪道・発進・街乗り | 軽量・低コスト・スタンバイ型 |
| ダイナミックトルクコントロール4WD | コーナリング・予測制御 | アクティブの進化版・先読み制御 |
| E-Four(電気式4WD) | 雪道発進・ハイブリッド車 | 応答速度が最速・低燃費 |
| フルタイム4WD | 本格悪路・常時4WD | 走破性最強・重い・燃費やや不利 |
【参考】ネクステージ:トヨタの4WDシステムの特徴と種類の解説
アクティブトルクコントロール4WDを搭載した車に乗っていて「4WDだから雪道は大丈夫」と思い込んでいる方は少なくありません。これは大きな誤解につながる可能性があります。
このシステムは「発進トラクション」を補助するのが主な役割です。4WDになることで、4輪それぞれが路面をしっかり捉え、雪道での発進や緩やかな坂道での走り出しがスムーズになります。実際、スタッドレスタイヤ+アクティブトルクコントロール4WDの組み合わせは、平地の圧雪路や一般的な冬道ではかなり頼もしい走りをします。
ただし、重要な注意点があります。4WDはあくまで「駆動力を4輪に分散して前に進む力」を高めるシステムです。「ブレーキの効き」は2WDと変わりません。制動距離を縮める効果はほとんどない、というのが実態です。
JAFが行った実験でも、雪道での制動性能(ブレーキ距離)において、4WD車と2WD車の間に大きな差は確認されていません。むしろ4WD車のほうが車重が50〜90kgほど重くなる分、制動距離がわずかに伸びるケースもあります。
さらに、アクティブトルクコントロール4WDは「スタンバイ型」であるため、タイムラグはわずかながら存在します。急激に路面が変化する場面(橋の上の凍結など)では、4WDへの切り替えが追いつかないケースもゼロではありません。過信は禁物です。
つまり、このシステムで雪道を安全に走るためにはスタッドレスタイヤが前提となります。4WD+スタッドレスはセットで考えることが基本です。スタッドレスタイヤを新調するタイミングは「溝の深さが50%(残り溝4mm目安)を下回る前」が推奨とされており、目視で確認できるスリップサインが出た段階では既にかなり劣化が進んでいると考えるべきです。
【参考】くるまのニュース:「4WDだから雪道に強い」は本当?過信は禁物なワケ
4WDは燃費が悪いというイメージを持っている方も多いでしょう。実際のところはどうなのでしょうか?
アクティブトルクコントロール4WDは、通常走行時はほぼFF状態で走ります。後輪への駆動力伝達が不要な場面では多板クラッチを解放し、不要な抵抗を減らす設計になっています。そのため、フルタイム4WDと比べれば燃費への悪影響は小さく抑えられています。
ヤリスのガソリン車を例に取ると、2WD(FF)の WLTCモード燃費は約20.4km/Lであるのに対し、アクティブトルクコントロール4WDを搭載した4WD車は約17.4km/L程度です(グレードによって異なります)。差は約3km/L前後で、年間1万kmを走行すると仮定するとガソリン代換算で年間約8,000円〜12,000円程度の差が出る計算になります。これは痛いですね。
車両本体価格の差も見逃せません。ヤリスでは2WDと4WDの価格差は同グレードで約16万〜18万円前後です。中古車市場でも4WD車は2WD車より同年式・同走行距離で10万〜20万円前後高い傾向があります。
維持費の観点では、4WDシステム特有のパーツ(多板クラッチのオイル交換など)も定期的なメンテナンスが必要です。スタンバイ型4WDのカップリングオイルは、一般的に4〜5万km走行ごとの交換が推奨されており、交換費用はディーラーでの作業で5,000円〜1万円程度が目安です。このコストを頭に入れておくと良いでしょう。
雪国にお住まいの方や冬場に山道を走る機会が多い方にとっては、この燃費差や維持費の上乗せが「安全への保険料」として十分に元が取れます。一方、都市部でほとんど雪が降らない地域では、2WDで十分なケースも多いです。自分の走行環境を客観的に振り返ることが、正しい選択につながります。
【参考】AGHトヨタ札幌:トヨタの4WDを種類別に紹介・コスト比較も