

電気自動車の整備で最初に徹底すべきは、駆動用バッテリー(高電圧)を「隔離」し、次に「遮断」して安全な状態を作ることです。i-MiEVは高電圧配線をオレンジ色で統一し、ケース・カバーで高電圧導電部を絶縁する設計ですが、事故や損傷があれば前提が崩れます。したがって、目視確認と手順の順守が整備品質そのものになります。
現場で混乱しやすいのは「停止したように見えるが、実は高電圧が生きている」パターンです。i-MiEVは“READY状態でも音がしない”ため、近づくときの安全手順が必要だと明記されています。さらにMiEVリモートシステム装着車では、パワースイッチのインジケーターが消灯していても高電圧システムが起動している可能性がある、という注意点があり、通常のガソリン車感覚だと見落としがちです。
参考)https://www.mitsubishi-motors.co.jp/afterservice/manual/pdf/imiev_manual.pdf
遮断の基本線は「パワースイッチLOCK」または「ヒューズ抜き取り」→待機→12Vマイナス端子取り外し→待機→サービスプラグ取り外し、という流れです。緊急時対応マニュアルでは、パワースイッチLOCKまたはパワーユニットコントロール(15A)ヒューズ抜き取り後、1分以上待機してから12Vマイナス端子を外し、さらに5分以上経過後に絶縁保護具を着用してサービスプラグを外す、と具体的な待機時間が示されています。
この「5分待つ」の意味は、車両システムが駆動用バッテリー内の高電圧回路の遮断を行う時間として書かれており、待機を短縮すると“高電圧を保持した部品やケーブル”に触れる危険が残る点がポイントです。特に、サービスプラグ取り外し時は「絶縁保護具着用」「説明されている方法以外で外さない」など、短絡・端子飛散による火傷リスクまで警告されています。
一方、廃車時の駆動用バッテリー取外し手順資料には、より作業者教育の話が踏み込んで書かれています。高電圧回路に関わる点検・整備を行う作業者には「低圧電気取扱いの特別安全教育の受講が義務付け」と明記され、さらに保護具は使用前の日常点検に加えて6ヶ月以内に耐電圧試験を行い、試験結果を3年間保存する(労働安全衛生規則の条文を引用)とされています。
参考)『アイミーブMに長く乗っている方に質問です。私は12年目..…
つまり、整備現場で本当に問われるのは「技術」だけでなく、「ルールを守った証跡を残せる運用」です。上司チェックで突っ込まれやすいのは、感電対策が“気をつける”で終わっている文章なので、遮断モード(手動・自動)や待機時間、保護具の管理まで、手順として書けるかが差になります。
【参考リンク(高電圧遮断の手順・待機時間・サービスプラグ取外し要領)】
三菱自動車:i-MiEV 緊急時対応マニュアル(高電圧遮断・サービスプラグ・牽引/運搬の注意)
整備士向けに“やってはいけない”を明確にするなら、まず「オレンジ色の高電圧配線やコネクターを、遮断前に外す/切る/分解する」は最上位のNGです。廃車時資料でも、サービスプラグを抜かずに高電圧部位の解体やオレンジ色配線の取外し・分解・切断を行うと生命に関わる重大な傷害につながるため「絶対に行わないでください」と明記されています。
高電圧コネクター取り外しに入る前提条件として、「高電圧系の部品を整備する際は、サービスプラグが抜けているか再度確認すること」と書かれており、“確認したつもり”を潰す運用が求められます。実務では、作業開始時チェックリストに「サービスプラグ抜去確認(復帰防止の保管者明確化)」まで落とすと事故が減ります。
意外に重要なのが、サービスプラグ取り外しの“動作途中は通電状態”という注意です。資料では「レバー引き上げ作動の途中は通電状態なので、中途半端な引き上げは危険。取外しは必ず一挙に行う」とされており、ここは教育で必ず強調したいポイントです。
また、救助・事故処理の文脈ですが、i-MiEVは駆動用バッテリー電解液が「リチウム塩を含む炭酸エステル溶液」で可燃性、空気中水分と反応して人体に有害な酸性蒸気を発生する、と具体的に書かれています。漏れがある可能性がある現場では、有機ガス用マスク・耐溶剤性手袋・保護メガネといった装備が“推奨”ではなく、実質必須になる局面があることを整備士側も理解しておくべきです。
整備工場の受け入れで起きる“想定外”は、事故歴・冠水歴が曖昧な個体が入庫してくるケースです。緊急時対応マニュアルでは、水没後や駆動用バッテリーに大きな損傷がある場合、時間経過後に発煙・発火するおそれがあるとして、保管時は建物や他車両から15m以上離して保管するよう注意が出ています。通常整備の延長で車検場の隅に置く、といった運用は危険側に倒れます。
「アイミーブ 三菱」で整備相談が多いのは、やはり航続距離低下や充電の体感変化など、バッテリー劣化に見える症状です。ここで重要なのは、劣化を“感覚”で決めず、SoH(State of Health)など指標で状態を把握して切り分けることです。SoHは新品を100%として劣化状態が何%かを示す指標で、交換時期を判断する目安になり得る、と整理されています。
ただし、SoHは万能の合否判定ではありません。記事では「SoHがどのくらいで買い替えたほうがよい、という指標は存在しない」とも書かれており、整備現場では“数値が低い=即交換”ではなく、ユーザーの使用実態(走行距離、温度環境、急速充電頻度)と症状の再現性を合わせて説明する必要があります。
参考)SoHとは?EVバッテリーの健康状態を知り劣化スピードを抑え…
また、バッテリー不調に見える症状は、セルバランス異常やセンサー系の不具合など“劣化以外”も混じります。一般ユーザー向けの体験談ではありますが、i-MiEVはバッテリー自体の故障は少なく、温度や電圧、バランスを扱う基板(BMS側)のセンサーやはんだが寿命で壊れることがある、という指摘も出ています。こうした情報は一次資料ではないため鵜呑みにせず、だからこそ診断機のデータ(セル電圧偏差、温度系、DTC、充放電制限)で裏取りする、という筋の良い整備プロセスにつなげられます。
参考)https://ameblo.jp/lol-damn/entry-12845705329.html
整備士向けの“意外な小ネタ”としては、メーカーの緊急時対応マニュアルにも「駆動用バッテリー仕様は16kWhまたは10.5kWhの330Vリチウムイオン、充電時は最大370V」と明記されている点です。点検説明で「330V系」と言いつつ、満充電時の電圧上昇(最大370V)を想定しない安全設計になっていると危険側に倒れるので、電圧レンジで認識を揃えておくと現場の会話が噛み合います。
EVの車検・点検は「エンジンが無いから楽」ではなく、点検の重心が変わります。緊急時対応マニュアルの“使用液体の色”一覧には、トランスミッション(ATF:赤)、冷却系(冷却水:青緑)、ヒーター(空調用)冷却水(青緑)、ブレーキフルード(無色透明)などが整理されており、液漏れ確認の指針として使えます。特にEVは走行音が小さく異常の兆候が拾いにくいので、目視・臭気・漏れ跡の基本が効きます。
回生ブレーキ主体の走り方が多い個体では、摩擦ブレーキの使用頻度が減り、スライドピン固着やパッド当たり不均一など“動かさないことで起きる不具合”が出ます。緊急時対応マニュアルは救助視点ですが、そこでも「ブレーキ、サスペンション、タイヤなどに損傷がある」場合は自走移動不可とするなど、足回りの健全性が安全要件になっています。日常点検でも、足回りはEVだからこそ手を抜けない領域です。
減速機(トランスミッション相当)については、ユーザーQ&Aでも「減速機オイル交換をメンテナンスブックの時期に従って実施」などの話題が出ており、EVでも油脂類メンテは残ります。整備士としては、交換有無の履歴確認と、漏れ・異音の確認を“エンジン車と同等以上に丁寧に”やるのが無難です。
また、牽引・移動の注意は点検整備と直結します。緊急時対応マニュアルでは、損傷車の運搬は「4輪すべて持ち上げた状態」で行い、後輪接地で移動するとモーターが回転して発電し、損傷状態によっては漏電火災のおそれがある、と明確に禁止しています。工場内のちょい移動でも、事故車・異常車は“押せば動く”発想を捨て、状態に応じて運搬方法を選ぶ必要があります。
検索上位の一般記事では「バッテリー劣化」や「航続距離」に話題が寄りがちですが、整備士向けに本当に差が付くのは“事故・水没個体の初動設計”です。緊急時対応マニュアルでは、水没車両は駆動用バッテリー内部に塩分を含む水が浸入すると過剰な電気分解で可燃性水素ガスが大量発生する可能性があるため、駆動用バッテリー内部に真水を注入して抑制する、という踏み込んだ方針が示されています。通常の整備マニュアルでは出会いにくい論点ですが、災害後に入庫する車両を扱う地方工場では現実に起こり得ます。
さらに、真水注入には「海水や塩分を含んだ水は絶対に注入しない」「注水後、放電のため14日間以上バッテリー内を満水状態に保つ」など、かなり具体的な運用条件が書かれています。整備士の独自視点としては、ここを“知っているだけ”では不十分で、受け入れ時点で水没疑いを見抜ける問診(冠水深、浸水時間、海水/淡水、保管状況)と、保管スペース・隔離距離・消火器準備まで含めて工場のオペレーションに落とし込む必要があります。
加えて、廃車時の資料では、駆動用バッテリーを重機(ニブラー等)で破損させる取り出しを禁止し、破損したものは安全性確保の観点から引き取りを断る場合がある、としています。ここは整備工場でも、事故車の外注先や解体業者との連携で揉めやすいポイントなので、“高電圧バッテリーは破損させないこと自体が工程品質”だと共有しておくとトラブルが減ります。
最後に、現場で見落としがちなのが「表示」と「周知」です。緊急時対応マニュアルでは、関係者が車両から離れる場合に「高電圧作業中!! 危険!触るな!」などの表示を行う、と具体的に書かれています。整備工場でも、作業者が入れ替わるタイミングや夜間保管で第三者接触が起きる可能性があるため、表示運用まで含めて安全設計にすると“事故が起きない工場”に近づきます。

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