
トヨタ86をターボ化する際の費用は、大きく分けて「部品代」と「工賃」に分類されます。最安構成では、部品代と工賃を合わせて約76万円程度が目安となります。ただし、選択するターボキットや追加パーツによって総額は大きく変動します。
主な費用内訳は以下のとおりです。
特に注目すべきは、単にターボキットを取り付けるだけでは不十分であるという点です。エンジンの耐久性を確保するためには、冷却系の強化やクラッチの強化なども必要となり、これらの追加部品によって費用は増加します。
また、ターボ化の費用を抑えるために中古パーツを使用するケースもありますが、信頼性の観点から新品の使用が推奨されています。中古パーツを使用する場合は、故障リスクが高まる可能性があることを認識しておくべきでしょう。
HKSは86のターボ化において最も人気のあるメーカーの一つです。HKSのボルトオンターボキットは、約70万4000円で販売されており、高効率キャタライザーや専用エキゾーストマニホールドが含まれています。
HKSのGTIII-RSターボキットは、純正比で約130馬力のパワーアップを実現し、トルクも大幅に向上させることができます。このキットの特徴は、ノーマルエンジンに対応しながらも高いパフォーマンスを発揮できる点にあります。
HKSのターボキットを選ぶメリットとしては、以下の点が挙げられます。
ただし、HKSのプレミアムセットを使用した場合、工賃込みで約130万円かかることもあります。高性能を求めるほど費用は増加する傾向にあるため、予算と希望する性能のバランスを考慮することが重要です。
86をターボ化する際には、ターボキット以外にも様々な追加部品が必要となります。これらの部品は、エンジンの耐久性を確保し、安定したパフォーマンスを発揮するために不可欠です。
主な追加部品と価格の目安。
工賃については、ショップによって異なりますが、一般的には以下のような費用がかかります。
特に重要なのは、ECUのセッティングです。ターボ化によってエンジン特性が大きく変わるため、適切なセッティングを行わないと、エンジンブローのリスクが高まります。専門知識を持ったショップに依頼することが強く推奨されます。
また、工賃は単にパーツを取り付けるだけでなく、取り付け後のテストや調整も含まれることが多いため、安価なショップを選ぶことが必ずしも得策とは言えません。信頼できるショップを選ぶことが、長期的に見て重要です。
86をターボ化することで、エンジンにかかる負担は大幅に増加します。これにより、様々な部分が壊れるリスクが高まります。特に注意すべきなのは以下の点です。
これらのリスクを軽減するためには、単にターボを取り付けるだけでなく、エンジン全体のバランスを考慮したアップグレードが必要です。特に、300馬力を超えるような高出力を目指す場合は、エンジン内部の強化(ピストン、コンロッド等)も検討すべきでしょう。
また、ターボ化後は定期的なメンテナンスがより重要になります。オイル交換の頻度を増やし、各部の点検を欠かさないことで、トラブルの早期発見と対処が可能になります。
86をターボ化する際に多くのオーナーが直面する問題が、車検への対応です。ターボ化は大幅な改造に当たるため、適切な対応をしないと車検に通らない可能性があります。
車検対応のためのポイント。
特に注目すべきは、HKSやBLITZなどの大手メーカーが提供する「車検対応」を謳ったターボキットです。これらのキットは、排気ガス規制や騒音規制をクリアするよう設計されているため、車検対応がしやすいという特徴があります。
ただし、車検対応といっても、そのまま取り付けるだけで車検に通るわけではありません。多くの場合、構造変更届の提出や、場合によっては排気ガス試験が必要になります。これらの手続きには追加の費用がかかることも考慮しておく必要があります。
また、車検対応のターボキットは、非対応のキットに比べて出力が控えめに設定されていることが多いです。これは法規制をクリアするための妥協点であり、最大限のパフォーマンスを求める場合は、サーキット専用車両として登録変更するという選択肢もあります。
車検対応と高出力の両立は難しい課題ですが、適切なパーツ選びと専門知識を持ったショップの協力があれば、公道走行可能な範囲内で満足のいくパフォーマンスを得ることは可能です。
86のターボ化は大きな出費を伴いますが、その投資に見合う価値があるのかを冷静に分析する必要があります。ここでは、ターボ化の費用対効果について考察します。
まず、ターボ化による主なメリットは以下の通りです。
一方、デメリットとしては以下が挙げられます。
費用対効果を考える上で重要なのは、自分がどのような目的で86を所有しているかです。サーキット走行を楽しむことが主な目的であれば、ターボ化による性能向上は大きな価値があるでしょう。一方、普段の通勤や買い物がメインの使用用途であれば、費用対効果は低いと言わざるを得ません。
また、将来的な維持費の増加も考慮すべき点です。ターボ化によってエンジンへの負担が増すため、定期的なメンテナンスの頻度や費用も増加します。さらに、故障した際の修理費用も高額になる可能性があります。
投資価値という観点では、ターボ化は車両の資産価値を必ずしも高めるわけではありません。むしろ、過度なカスタマイズは中古市場での価値を下げることもあります。ただし、適切に行われたターボ化で、車検対応もしっかりしていれば、特定のバイヤーにとっては魅力的な車両となる可能性もあります。
結論として、86のターボ化は純粋に「走りの楽しさ」を追求する愛好家にとっては価値ある投資ですが、経済的な観点からは必ずしも合理的とは言えません。自分の使用目的や予算、そして車への思い入れを総合的に考慮して判断することが重要です。
実際に86をターボ化したオーナーの事例から、成功のポイントと失敗の教訓を学ぶことができます。ここでは、複数の成功事例から共通して見られるポイントをまとめます。
成功事例に共通するポイント。
実際の成功事例として、HKSのGTIII-RSターボキットを導入し、強化クラッチとオイルクーラーを同時に装着したケースでは、約90万円の費用で約280馬力を実現しています。この車両は、適切なメンテナンスを行うことで、3年以上トラブルなく走行を続けているとのことです。
一方、失敗事例としては、コスト削減のために冷却系の強化を怠ったケースがあります。この車両は、サーキット走行中にオーバーヒートを起こし、最終的にエンジンブローに至りました。修理費用を含めると、結果的に通常のターボ化よりも高額な出費となってしまいました。
これらの事例から学べることは、ターボ化は単にパワーを上げるだけでなく、車両全体のバランスを考慮したアップグレードが必要だということです。特に冷却系の強化は、エンジンの耐久性を確保するために不可欠な要素と言えるでしょう。
また、ターボ化後の適切な運転方法も重要です。エンジンオイルの温度が上がりきる前に高回転を使用しないなど、ターボエンジン特有の注意点を理解し、実践することが長期的な信頼性につながります。
86のターボ化を検討する際、もう一つの選択肢として新型BRZの購入も考慮に値します。ここでは、86をターボ化するのと、新型BRZを購入するのとでは、どちらがコストパフォーマンスに優れているかを比較します。
まず、費用面での比較。
単純な費用だけを見れば、すでに86を所有している場合、ターボ化の方が安価です。しかし、以下の点も考慮する必要があります。
興味深いのは、新型BRZは初代86と比較して、エンジンの排気量が2.0Lから2.4Lに拡大され、自然吸気でも十分なトルクと馬力を発揮するように設計されている点です。これにより、ターボ化のような大幅な改造をしなくても、スポーティな走りを楽しむことができます。
一方、すでに86を所有しており、さらなるパフォーマンスを求める場合は、ターボ化が魅力的な選択肢となります。特に、サーキット走行を楽しむことが主な目的であれば、ターボ化による大幅なパワーアップは大きなメリットです。
結論としては、新車購入の予算があり、信頼性を重視するなら新型BRZの購入が賢明です。一方、すでに86を所有しており、DIY精神があり、より高いパフォーマンスを求めるなら、ターボ化も魅力的な選択肢と言えるでしょう。どちらを選ぶかは、個人の優先順位や予算、そして車への思い入れによって異なります。