

スプリンターの整備で最初に意識したいのは、「故障コード=原因確定」ではなく「故障コード=疑う方向」だという点です。加速不良や制限走行(いわゆるフェイルセーフ)では、専用診断機をつないでコードを拾うのは当然として、次に“実測値を見て異常の系統を絞る”段取りを固定化すると、遠回りが減ります。
特にディーゼル系の不調は、燃料・過給・排気浄化・吸気のどこか一つが崩れても、結果として似た症状(パワーが出ない、80km/h以上伸びない等)になりがちです。現場では「症状→系統→作動確認→部品」という順番にし、部品交換が先に立たないようにすると、見積り精度と再現性が上がります。
作業のコツは、次のチェックを“毎回同じ順で”やることです。
「専用診断機が必須か?」と聞かれることがありますが、少なくとも“汎用スキャナで見えない領域”が整備効率に直結します。実際、メルセデス系の診断はXENTRY/DASなど車両に最適化された環境を前提に語られることが多く、現場としては「診断機が無いので分からない」を減らす投資判断が必要になります。
エンジン不調の典型例として、“速度が伸びない・坂で失速する”症状は、現場で遭遇頻度が高い部類です。過去事例では、専用テスター(DAS)で診断し、ニードルモーションセンサー(ニードルリフト系センサー)故障が原因だったケースが報告されています。
この事例で重要なのは、部品代が高額(約12万円)だったという点よりも、「的確な故障診断をしないとコストが跳ね上がる」ことが整備側のリスクになる点です。
実務的には、次のように“高額部品ほど後ろに回す”ロジックが効きます。
意外と見落とされがちなのが、「症状が強いのに故障コードが少ない」パターンです。こういう時こそ実測値・作動テストがものを言い、最短で“系統”を当てにいけます。
参考)メルセデスベンツ スプリンター 加速不良 - 伊藤モータース…
排気浄化系(DPF/EGR)は、スプリンターの整備で“再発”の話になりやすい領域です。煤の堆積や固着が進むと、警告灯点灯や出力低下につながり、さらに差圧センサーなどのセンサー異常が絡むと、見かけ上の症状が複雑化します。
実例として、EGRの煤溜まり・固着、DPF差圧センサーの内部故障、EGRパイプの煤詰まりなどが列挙されており、「どれか一つ」ではなく“複合で起きる”前提で点検計画を立てるのが現実的です。
また、DPF系は「本当に詰まっているのか?」の見極めが重要で、差圧センサー故障があると再生や通常走行に支障が出る可能性がある、という整備現場の注意喚起もあります。
参考)メルセデスベンツ W205 DPF再生できないって? エンジ…
ここでの実務ポイントは次の通りです。
独自視点として、排気系は「部品を直す」だけでなく「運用を整備する」発想が効きます。短距離・低負荷中心の使われ方は煤堆積と相性が悪く、点検入庫時にユーザーへ“再発しにくい使い方”を短く伝えるだけでも、クレーム低減につながります。
参考)Mercedes-Benz/メルセデスベンツ/W205/C2…
排気浄化系の全体像(制度・対策状況)を確認するなら、まずはメーカー公式の改善措置情報の導線を押さえるのが安全です。
参考)メルセデス・ベンツ日本公式サイト - リコール関連情報
リコール等の未対策確認(車台番号で検索)に役立つ。
メルセデス・ベンツ日本 公式:リコール関連情報(未対策の改善措置検索の案内)
「振動が増えた」「加減速でガツンとくる」という相談は、エンジン本体の不調に見えて、実はマウント劣化が主因のことがあります。一般論として、エンジンマウント劣化の症状はアイドリング時の振動増大や、加減速時の異音(ガツン)として現れやすいとされています。
スプリンターの実作業例でも、点検時にエンジン下部のエンジンマウントが切れていた(損傷していた)という記録があり、点検で拾える“見える不具合”として重要です。
整備士向けの段取りとしては、試運転で「症状の出る条件(Dレンジ、ブレーキ保持、回転数)」を揃えてから、目視+負荷をかけた状態でマウントの動きを確認すると、診断の確度が上がります。
参考)エンジンマウントの交換は必要?交換時期と方法を解説!
交換作業では、周辺ボルト・ナットも同時交換を推奨する考え方があり、固着・錆・疲労を前提に作業計画を組むのが無難です。
ここが意外な落とし穴で、マウント劣化を放置すると「振動が増えた」だけで終わらず、配線やホース、コネクタに余計なストレスがかかって二次故障を誘発しやすくなります。エンジン不調・センサー異常を追っている最中ほど、足元(支持系)を一度疑うのが、結果として近道になる場面があります。
参考)メルセデスベンツ スプリンター(W903)キャンパー仕様 ス…
輸入車整備で“作業が完璧でも直らない”原因として、未実施の改善措置(リコール等)が残っているケースがあります。メルセデス・ベンツ日本の公式サイトでは、未対策の改善措置(リコール等)があるかを検索でき、また制度の趣旨や注意事項(更新に半月程度要する可能性等)も明記されています。
整備現場の実務としては、入庫時の問診・見積り前に「未対策があるか」を一度確認する運用にすると、原因不明案件の泥沼化を避けやすくなります。
ユーザー説明のコツは、「リコールは無料修理であることが多い」だけを強調するのではなく、整備工場側の作業範囲(点検・診断)と、メーカー指定工場での措置範囲(改善措置)を線引きして伝えることです。これをやるだけで、費用面・責任範囲の誤解が減り、トラブル対応コストが下がります。
最後に、スプリンターは用途が商用・キャンパー・特殊架装など多岐にわたり、使用条件が厳しい個体ほど「排気浄化」「支持系」「電装診断」が絡みやすい車種です。だからこそ、コード読取→実測値→作動確認→機械点検→改善措置確認、の順番を“毎回同じにする”のが、安定して勝てる整備手順になります。

Kinsmart/キンスマート◇メルセデスベンツ スプリンター◇1/48ダイキャストモデルミニカー(プルバックカー)/ブルー