

ジャイロセンサーが非搭載のスマホでカーナビアプリを使うと、トンネル内で自車位置が数百メートルずれたまま案内され続けることがある。
ジャイロセンサーとは、物体の「回転の速さ(角速度)」を計測するセンサーです。スマートフォンを横に傾けたとき、どちらにどれだけ回転したかをリアルタイムで検出します。一方、似た名前の加速度センサーは「直線方向の動き(前後・左右・上下)」を計測するもので、役割が根本的に異なります。
車の運転で言い換えると、加速度センサーはアクセルを踏んで前に進む「直進の動き」を捉えます。ジャイロセンサーはハンドルを切ったときの「曲がる動き」を捉えます。つまり、どちらかが欠けると車の動きを正確には追えないということです。
カーナビアプリの仕組みとして重要なのが「推測航法(デッドレコニング)」という技術です。GPSの電波が届かないトンネルや地下でも、直前までの速度・方向をもとに現在地を推定し続ける仕組みです。この推測航法を正しく機能させるために、ジャイロセンサーと加速度センサーの両方が必要になります。
つまり、ジャイロセンサーが鍵です。
| センサー名 | 何を測る | カーナビでの使われ方 |
|------------|----------|---------------------|
| ジャイロセンサー | 角速度(回転の速さ) | 曲がった方向・角度の検出 |
| 加速度センサー | 直線加速度 | 移動距離・傾斜角の検出 |
| 車速センサー(車載のみ) | タイヤの回転数 | 移動速度の精密な把握 |
車載カーナビが車速センサー・ジャイロ・GPSを組み合わせて高精度を実現するのに対し、スマホは車速センサーを持たないため、ジャイロセンサーの品質がナビ精度を左右します。これは自動車ユーザーにとって非常に重要なポイントです。
カーナビの測位の仕組みについては、以下のオートバックス公式の解説も参考になります。
カーナビ基礎知識(オートバックス公式):ジャイロセンサーと加速度センサーの違いをわかりやすく解説
確認方法はOSによって異なります。iPhoneとAndroidでは手順が全く違うので、それぞれ順を追って見ていきましょう。
iPhoneの場合
iPhoneは、iPhone 4以降のほぼすべてのモデルにジャイロセンサーが搭載されています。搭載確認だけが目的であれば、Apple公式のサポートページでお使いの機種のスペックを確認するのが最も確実です。動作確認をしたい場合は「Sensor Test」「Physics Toolbox Sensor Suite」などのアプリを使えば、センサーの反応を視覚的にリアルタイムで確認できます。iPhoneはほぼ心配不要です。
Androidの場合
Androidスマホは機種ごとにセンサー搭載状況が大きく異なります。特に1〜2万円台の格安モデルではジャイロセンサーが省かれているケースが多く、購入前の確認が欠かせません。
確認手順は以下の通りです。
- ① Google Playで「Sensor Test(開発者:andr7e)」を無料でインストールする
- ② アプリを起動すると、搭載センサーの一覧が表示される
- ③ 「Gyroscope(ジャイロスコープ)」の項目があれば搭載済み
- ④ 項目が表示されない、または「このデバイスでは利用できません」と出れば非搭載
もう一つの確認方法として、「Sensor Kinetics」というアプリも有名です。起動するだけで搭載センサーの一覧と動作状況がグラフで確認でき、ジャイロスコープの欄にTypeなどが表示されれば搭載済みと判断できます。逆に「このデバイスでは利用できません」と出た場合は非搭載です。これが基本です。
オンラインで手軽に確認したい場合
アプリのインストール不要で、ブラウザから直接確認できるツールもあります。以下のサイトにスマホでアクセスし、画面の指示どおりに端末を動かすと、センサーの反応がリアルタイムで確認できます。
オンラインジャイロスコープテスト(onlinemictest.com):スマホをブラウザで傾けるだけで即確認できる無料ツール
ジャイロセンサーが搭載されていないスマホでカーナビアプリを使い続けると、具体的にどんな問題が起きるのでしょうか?
最も典型的なのが、トンネル内での位置ズレです。GPSはトンネル内では電波を受信できません。この状況で推測航法を使うのですが、ジャイロセンサーがないとカーブの角度を正確に把握できず、出口付近で「地図上の自車位置が実際から数百メートルずれる」という現象が起きます。首都高速のように短いカーブが連続するルートでは特にズレが大きくなりやすく、正しい出口で降りられないリスクもあります。
これは使えそうです。知っておくと実際のドライブに役立ちます。
また、複数の道路が上下に重なる高架橋・高速道路と一般道が並走しているエリアでも問題が出ます。ジャイロセンサーがあれば道路の傾斜(上り坂・下り坂)を検知してどちらを走行中かを判定できますが、非搭載の場合はGPSだけに頼るため、実際には高速道路を走っているのに「一般道を走行中」と誤判定するケースがあります。
実際、カーナビアプリ「Yahoo!カーナビ」がトンネル内案内をアップデートした際も、「スマホの機種によってセンサーの感度が異なるためズレが生じることがある」と公式にアナウンスされています。ジャイロセンサーが非搭載の機種では特にその影響が顕著です。
以下の記事では、カーナビアプリのトンネル内測位に関する詳しい背景が解説されています。
Yahoo!カーナビのトンネル内案内アップデートの詳細(mobility-transformation.com):機種ごとのセンサー差による影響についても言及あり
なお、純粋にGPSが通じる開けた道路を走行する分には、ジャイロセンサーなしでも大きな問題は起きにくいです。ただし、都市部・首都高・山間部のトンネルが多いルートを走ることが多い人には、ジャイロセンサーの搭載確認が強くすすめられます。
ジャイロセンサーの非搭載はどんな機種に多いのか、具体的な傾向を押さえておきましょう。
格安Androidスマホに多い点が最大の特徴です。コストダウンのしわ寄せがセンサー類に向きやすく、2万円以下の端末では省略されているケースが少なくありません。過去に非搭載と確認されているモデルの例を挙げると次のようになります。
- HUAWEI系:P8 Lite、P9 Lite、GR5、Y6 など
- ASUS Zenfone系:Zenfone 2 Laser(5インチモデル)、Zenfone Go、Zenfone Max など
- Motorola系:Moto G 第3世代、Moto X Play
- ZTE系:Blade E01、Blade L3、Blade V6、Blade V7 Lite など
- Xiaomi系:Redmi 14C など(2024年発売の最新エントリーモデルでも非搭載例あり)
もちろん、すでに旧機種であるものも多く、現在販売されているモデルとは異なります。厳しいところですね。ただし、今でもメーカーを問わず1〜2万円帯のAndroidエントリーモデルでは同様の省略が続いています。
一方、iPhoneは前述の通りiPhone 4以降はほぼ全モデル搭載済みです。メインで使っているスマホがiPhoneであれば、ジャイロセンサーについてはほぼ心配いりません。
格安スマホのセンサー搭載状況については、以下の記事も参考になります。
スマートフォンに搭載されているセンサー類と役割まとめ(garumax.com):格安スマホでのジャイロセンサー非搭載の傾向を解説
なお、購入前にメーカーの公式スペック表で「ジャイロスコープ」または「角速度センサー」という項目を探す方法が最も確実です。公式スペック表に記載がない場合は非搭載の可能性が高いと考えて問題ありません。それだけ覚えておけばOKです。
ジャイロセンサーは「あるかないか」だけでなく、「正常に動いているかどうか」も重要な確認ポイントです。これは見落とされがちですね。
故障や誤作動が起きると、以下のような症状が現れます。
- スマホを縦向き・横向きにしても画面が自動回転しない
- カメラで写真を撮ると上下逆さまや斜めに保存される
- マップアプリを開いたとき、進行方向の矢印がグルグル回り続ける
- カーナビ使用中に頻繁に自車マークがぶれる・飛ぶ
特に4つ目の「カーナビ使用中に自車マークが不規則に動く」という症状は、ジャイロセンサーの誤作動が原因のことがあります。画面回転の不具合に気づかないまま使い続けているドライバーも少なくありません。
故障の原因として多いのは「落下による基板へのダメージ」と「水没によるセンサーの破損」です。特に一度でも水没させた経験があるスマホでカーナビを使っている場合は、センサーの動作確認を一度おこなっておくことをすすめます。
自己診断の手順
- ① 前述の「Sensor Test」アプリを起動し、ジャイロスコープの項目をタップする
- ② スマホをゆっくり左右・前後に傾けながら、数値がリアルタイムで変化するか確認する
- ③ 本体を動かしているのに数値が「0」のまま動かない場合は、センサーの誤作動・故障の可能性がある
ソフトウェア起因の場合はスマホを再起動するだけで改善することもあります。再起動で直らない場合は、Androidであれば「設定→端末情報→センサー調整」の手順でキャリブレーション(補正)を試みることができます。それでも改善しなければ、基板レベルの物理的な損傷が疑われるため、メーカーサポートまたはスマホ修理専門店への相談が必要です。修理費は機種や修理業者によって異なりますが、基板修理が必要な場合は1万円〜3万円程度かかるケースが多いです。
iPhoneの場合、ジャイロセンサーは基板内部に組み込まれているため部品単体での交換はできません。Appleストアまたは認定修理店では本体交換対応になるケースがほとんどです。出費は痛いですね。
カーナビを頼りにして運転しているなら、センサーが正常に機能しているかを定期的に確認する習慣を持っておくと、予期せぬ位置ズレトラブルを未然に防げます。
ジャイロセンサー故障の原因と対処法については、以下も参考になります。
iPhoneのジャイロセンサーが故障した場合の解決策(iphone-shuuri.jp):故障原因と対処法をわかりやすく解説