

エアサスペンションを搭載したトラックは「乗り心地が良くなるだけ」と思っていませんか?実は、過積載状態でエアサスを使い続けると、1か所の修理費だけで10万円超の出費になることがあります。
エアサスペンション(エアサス)とは、圧縮した空気を特殊なゴム製パーツ「ベローズ」に封入し、そのクッション性で路面からの衝撃を吸収するサスペンションシステムです。コンプレッサーで空気を圧縮し、エアタンクに貯め、必要に応じてベローズへ供給するという流れで動作します。
乗用車ではコイルバネ(渦巻き型のスプリング)が一般的ですが、トラックはこれまで「板バネ(リーフスプリング)」が長く主流でした。板バネは複数の金属板を重ねた構造で、強度と耐久性に優れ、比較的シンプルで安価に製造できるという利点があります。しかし近年、エアサスの搭載率が急速に高まっています。
その最大の理由は、トラック特有の「重量の大きな変動」への対応力です。
| 条件 | 板バネ(リーフサス) | エアサスペンション |
|---|---|---|
| 衝撃吸収性能 | 標準的 | 高い(空気圧調整で可変) |
| 積載量による変化 | 対応が難しい | エア圧調整で柔軟に対応 |
| 車高調整機能 | なし | あり(リモコン操作) |
| 導入コスト | 比較的安価 | 高額 |
| 錆への耐性 | 金属なので注意が必要 | ゴム製なので強い |
乗用車の場合、フル乗車(4人)と一人乗りの重量差はせいぜい200〜300kg程度です。ところがトラックでは、空車時が10トン、満載時が20トンという差が10トンにもなるケースがあります。東京スカイツリーの展望台エレベーター1基の最大積載量が約1.6トンですから、その差が実に6基分以上にもなる計算です。
板バネの場合、満載を基準に設計すると空車時には非常に硬い乗り心地になってしまいます。エアサスはこの問題を、積載量に合わせてエア圧を調整することで解決できます。これが主流になった最大の理由です。
また、融雪剤が多く使われる雪国では、金属製の板バネが腐食しやすいという問題もあります。ゴム素材を主体とするエアサスにはこの問題がなく、雪国のトラックにとってもメリットが大きいといえます。
いすゞ自動車がトラックのサスペンションを詳しく解説しています。エアサスが主流になった背景が図解でわかります。
エアサス最大の特徴は、運転席のリモコン一つで車高を上下に調整できることです。基本操作はシンプルで、サイドブレーキを引いた状態でスイッチを入れ、↑・↓ボタンで車高を動かし、作業後は元の高さに戻すだけです。
サイドブレーキを引かずに操作すると危険です。これは必ず守ってください。
実際の現場では、以下のような場面で活躍します。
さらに便利なのが「記憶機能」です。M1ボタンとSTOPボタンを同時に長押しすると、その時の車高を記憶させることができます。いつも同じホームで作業する場合、毎回高さを合わせる手間が省けます。これは使えそうです。
また、運転席のリモコン以外に、荷台後方の「操作ボックス」からもエアサスを制御できます。後方で作業しながら車高を調整したい場面に便利な機能です。
前輪と後輪を個別に操作できるタイプもあり、荷物の積み方に合わせて前後のバランスを調整することも可能です。総輪エアサス(前後全輪にエアサスを装備したもの)では、後輪のみのエアサスと比べて荷台への振動を約20%軽減できるという調査データもあります。精密機器や高級食材を運ぶトラックで特に重宝されているのはこのためです。
グットラックshimaが解説するエアサスの基本操作から応用機能まで。記憶機能の詳細が確認できます。
エアサスのベローズは何万〜何十万回もの耐久試験を経て製造されており、理論上は半永久的に近い耐久性を持ちます。ただし、それはあくまで適切な使い方と適正積載が前提の話です。
故障が実際に起きた場合の修理費用を把握しておくことは、コスト管理の観点から非常に重要です。
| 故障箇所 | 修理費用の目安 |
|---|---|
| エアドライヤー交換 | 4〜5万円程度 |
| コンプレッサー交換 | 5〜10万円程度 |
| ベローズ交換(1か所) | 10万円前後 |
| 全体交換・大規模修理 | 50万円以上になるケースも |
主要パーツであるベローズが1か所10万円前後です。前後4か所を同時に交換すれば40万円超になる計算です。
故障の主な原因は2つあります。1つ目は、コンプレッサーやエアタンク・エア供給ラインのトラブルです。圧縮エアがベローズに届かなくなると、空気の抜けたタイヤのような状態になり、衝撃吸収機能が失われます。2つ目は、ベローズ自体への外部からの傷や、経年劣化による破損です。傷が付いたままで荷重をかけると、破裂するリスクがあります。
故障のサインには以下のようなものがあります。
これらのサインが出たら、走行を続けず早めに点検に出すことが原則です。放置するとベローズ破裂のリスクが高まり、修理費用がさらに膨らみます。
なお、長期間使用した老朽トラックでエアサスが故障した場合は、修理よりも乗り換えを検討した方が費用対効果が高いケースも多いといわれています。ベローズ以外の主要パーツも経年劣化している可能性が高く、修理費用を回収する前に別の箇所が故障するリスクがあるためです。
トラックの買い替えを検討する場合は、中古トラック販売店を活用すると、新車に比べて大幅にコストを抑えながら良好なコンディションの車両を短納期で入手できます。即納対応の車両も多く、業務への影響を最小限に抑えられます。
エアサスの寿命の目安は走行距離10万〜15万kmです。ただし、適切なメンテナンスと運用を続ければ、この目安を大きく超えることも可能です。逆に、メンテナンスを怠ると想定より早く故障に至る場合があります。
寿命を延ばすための基本は4点です。
メンテナンスの頻度について補足すると、最低でも1年に1度の専門点検が推奨されています。これはゴム製のベローズが紫外線・熱・オゾンによって徐々に硬化していくためで、外見上は問題なく見えても内部で劣化が進んでいるケースがあります。
定期点検の費用は状態に応じて変わりますが、早期発見によって「4〜5万円のエアドライヤー交換」で済んでいたものが、放置によって「10万円超のベローズ交換」になるリスクがあります。これは注意すれば大丈夫です。
エアサスを長持ちさせる日常ケアについては、グットラックshimaが寿命と故障サインをわかりやすくまとめています。
シマ商会「トラックのエアサスは寿命が長い!故障のサインや寿命を延ばす方法」
「エアサスがあれば板バネは不要」と考える人もいますが、それは間違いです。板バネとエアサスにはそれぞれ得意な用途があり、運ぶ荷物や使用環境によって適切な選択が変わります。
エアサスが特に力を発揮するのは、以下のような用途です。
一方、板バネが適しているのは以下のような場面です。
結論はシンプルです。精密・高価値な荷物を長距離で運ぶならエアサス、頑丈な荷物を短距離で運ぶなら板バネが費用対効果の高い選択肢です。
なお、エアサス搭載車は車両本体価格も板バネ車より高い傾向があります。購入時に「なぜエアサスが必要か」を明確にしないと、コストだけが増えて恩恵を十分に受けられない状況になります。そのため、年間の輸送内容と走行距離を具体的に洗い出してから車両選びをすることが重要です。
エアサスと板バネそれぞれのメリット・デメリットと、用途別の選び方を詳しく解説しているページです。
シマ商会「トラックの板バネとエアサスの違いとは?サスペンションの選び方も」

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