
メルセデス・ベンツCLAクラスは、ベンツの中では比較的手頃な価格で購入できるモデルとして知られていますが、実際に所有してみると維持費の高さに驚く方が少なくありません。
まず、定期点検やメンテナンス費用は国産車と比較して明らかに高額です。ベンツは購入後3年間は無料保証がありますが、それ以降も安心して乗るためには「保証プラス」や「メンテナンスプラス」といった延長保証プログラムへの加入が推奨されます。これらのプログラムに加入すると、5年間の保証が受けられますが、その費用は約23万円と決して安くはありません。
また、CLAクラスはハイオクガソリン指定の車種が多く、燃料代も通常のレギュラーガソリン車と比べて割高になります。CLA200dのようなディーゼルモデルであれば燃費は良好ですが、それでも長期的に見ると維持費は嵩みます。
特に注意が必要なのは、保証期間が切れた後の修理費用です。輸入車特有の部品代の高さや、専門的な技術が必要な修理は国産車の数倍のコストがかかることもあります。例えば、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の故障は、修理費用が100万円を超えるケースもあり、オーナーを悩ませる大きな問題となっています。
CLAクラスの大きな特徴であるクーペスタイルのデザインは、外観の美しさを引き立てる一方で、後部座席の居住性を犠牲にしています。実際に乗車してみると、その狭さに驚く方が多いようです。
まず、ルーフラインが低く設計されているため、後部座席のヘッドスペースが限られています。身長170cm程度の大人でも、頭上の空間が窮屈に感じることがあります。これは、デザイン性を重視した結果であり、4ドアクーペというスタイルの宿命とも言えるでしょう。
また、膝前空間も十分とは言えません。運転席の後ろに座る場合、ドライバーが適切なドライビングポジションをとると、後席の膝前空間はかなり限られてしまいます。助手席側は比較的余裕がありますが、それでも身長169cmの人が座って拳2つ分程度のスペースしかないという報告もあります。
さらに、座面が低く設計されているため、膝が少し持ち上がるような不自然な姿勢での着座となり、長時間のドライブでは疲れを感じやすくなります。これは、ヘッドスペースを確保するための設計上の工夫ですが、快適性を損なう要因となっています。
家族での利用や、頻繁に後部座席に人を乗せる機会がある方にとっては、この狭さは大きなデメリットとなるでしょう。特に長距離移動では、後部座席の乗員の快適性は著しく低下します。
CLAクラスの美しいスタイリングを支える要素の一つが低い車高ですが、この特徴が日常使いにおいて意外な苦労を生み出しています。CLAの最低地上高はわずか120mmと非常に低く設定されており、一般的な道路環境でも様々な場面で気を使う必要があります。
例えば、コンビニやスーパーの出入り口にある小さな段差でも、フロントリップが接触してしまうリスクがあります。マンションの駐車場スロープや、ショッピングモールの立体駐車場の傾斜も、CLAオーナーにとっては毎回緊張する場面となります。
また、スピードバンプのある道路では、極端に速度を落とさなければならず、後続車からのプレッシャーを感じることもあるでしょう。さらに、未舗装路や雪道などの悪路では、車体下部を傷つけるリスクが高まるため、そもそも走行を避けざるを得ないケースも少なくありません。
この低い最低地上高は、CLAの美しいデザインと引き換えに得た特徴ですが、実用性を重視するドライバーにとっては大きなストレス要因となり得ます。特に日本の道路環境では、思いのほか多くの場面で注意が必要となるため、購入前にこの点をしっかりと考慮することが重要です。
メルセデス・ベンツのエントリーモデルであるCLAクラスは、新車購入時は比較的手頃な価格で高級ブランドの車に乗れるというメリットがありますが、中古市場での評価は必ずしも高くないという現実があります。
現行モデル(C118系)のCLAは、3年落ちで残価率約70%と比較的高い水準を保っていますが、これは近年の新車不足による中古車相場高騰の影響も大きいと考えられます。長期的に見ると、CLAクラスはCクラスやEクラスといった上位モデルと比較して、リセールバリューの低下が早い傾向にあります。
特に、モデルチェンジを跨いだ型落ちモデルは価値が大きく下落し、5年以上経過した車両では残価率が大幅に低下します。また、走行距離が多い車両は特に値下がりが早く、年間1万km以上走行するドライバーにとっては、将来の売却を考えると不利になる可能性があります。
リセールバリューを少しでも高く保つためには、人気のあるグレードや装備を選ぶことが重要です。具体的には、「CLA200d」のグレードで、ボディカラーは「クロ(黒)」、さらに「AMGラインパッケージ」と「パノラミックスライディングルーフ」を装備した仕様が中古市場では評価される傾向にあります。
長期保有を前提に購入するのであれば大きな問題ではありませんが、数年での乗り換えを考えている方は、このリセールバリューの低下を念頭に置いた購入判断が必要でしょう。
メルセデス・ベンツCLAクラスは、そのエントリーモデルとしての位置づけから、時に「貧乏人のベンツ」と揶揄されることがあります。このようなイメージが生まれる背景には、いくつかの要因があります。
まず、CLAクラスはメルセデス・ベンツの中で最も手頃な価格帯に位置しており、CクラスやEクラスといった上位モデルと比べて購入ハードルが低いことが挙げられます。CLA180の新車価格は約570万円からと、ベンツブランドの中では比較的手の届きやすい価格設定となっています。このため、「本当の高級車を買えない人が妥協して選ぶ車」というイメージが一部で形成されています。
また、CLAクラスは前輪駆動(FF)ベースのプラットフォームを採用しており、メルセデス・ベンツの伝統的な高級車に多い後輪駆動(FR)とは走行特性が異なります。走行性能や乗り心地にこだわる自動車愛好家からは、「本物のメルセデスではない」と評価されることもあります。
しかし、このような見方は必ずしも公平とは言えません。CLAクラスは、若い世代や都市部のドライバーを中心に、そのスタイリッシュなデザインと取り回しの良さから高い支持を得ています。特に、デザイン性を重視する層からは、むしろ積極的に選ばれる車種となっています。
実際、CLAクラスの購入者の多くは、単に「安いベンツ」を求めているわけではなく、そのクーペライクなスタイリングや、コンパクトながらも高級感のある室内空間、先進的な技術装備などに魅力を感じて選んでいます。
重要なのは、他人の評価や世間のイメージに左右されず、自分のライフスタイルや価値観に合った車を選ぶことでしょう。CLAクラスが持つ独自の魅力を理解し、その特性が自分のニーズに合致するかどうかを冷静に判断することが、購入後の満足度を高める鍵となります。
メルセデス・ベンツCLAクラスを長期間保有する場合、故障リスクと修理費用は重要な検討ポイントとなります。特に保証期間が切れた後の故障は、オーナーに大きな経済的負担をもたらす可能性があります。
CLAクラスで特に注意すべき故障ポイントの一つが、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)です。このトランスミッションは、スムーズな変速と燃費向上を両立する優れた機構ですが、経年劣化によって不具合が生じるリスクがあります。DCTの故障修理をディーラーに依頼すると、100万円を超える高額な修理費用が発生することもあります。
また、電子制御システムの不具合も見られることがあります。メルセデス・ベンツは先進的な電子技術を多く採用しており、センサー類やコンピューターモジュールの故障は、診断だけでも高額な費用がかかる場合があります。
さらに、エンジンオイルの消費量が多いという報告もあります。特に、ターボチャージャー付きの小排気量エンジンでは、オイル管理が重要となります。定期的なオイルチェックと、適切なタイミングでのオイル交換が必要です。
これらのリスクを軽減するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。特に、ディーラーの無料保証期間(3年)が終了した後も、専門知識を持つショップでの定期点検を継続することが重要です。また、保証プラスなどの延長保証プログラムへの加入も検討する価値があります。
中古車購入の場合は、過去のメンテナンス履歴をしっかりと確認し、定期点検が適切に行われてきた車両を選ぶことが重要です。特に、7年以上経過した車両では、前オーナーのメンテナンス状況によって車の状態が大きく異なるため、購入前の入念なチェックが必要となります。
長期保有を考えている場合は、これらの潜在的なリスクと修理費用を念頭に置いた資金計画を立てておくことが賢明です。適切なメンテナンスと予防的な部品交換を行うことで、CLAクラスの寿命を延ばし、高額な修理費用を回避することができるでしょう。
CLAクラスの購入を検討する際、同じメルセデス・ベンツの他モデルと比較することで、そのメリットとデメリットがより明確になります。特にCクラスとの比較は、多くの購入検討者が行う重要なステップです。
【CLAクラスとCクラスの比較】
比較項目 | CLAクラス | Cクラス |
---|---|---|
価格帯 | 570万円〜 | 650万円〜 |
駆動方式 | FF(前輪駆動)ベース | FR(後輪駆動)ベース |
後部座席の広さ | 狭め(特に頭上空間) | 比較的広い |
乗り心地 | やや硬め、スポーティ | 快適性重視 |
デザイン特徴 | 4ドアクーペスタイル | 伝統的セダンスタイル |
リセールバリュー | 低下しやすい | 比較的安定 |
CLAクラスの最大のメリットは、そのスタイリッシュなデザインと比較的手頃な価格です。4ドアクーペというスタイルは若々しく洗練された印象を与え、特に外観デザインを重視する方にとっては大きな魅力となります。また、コンパクトなボディサイズは都市部での取り回しの良さにつながり、駐車のしやすさなど日常使いの利便性も高いです。
一方、Cクラスは伝統的なセダンスタイルで、より広い室内空間と快適な乗り心地を提供します。特に後部座席の居住性はCLAクラスを大きく上回り、家族での使用や長距離移動に適しています。また、FR(後輪駆動)ベースの走行特性は、メルセデス・ベンツの伝統的な「走りの質」を重視する方に支持されています。
価格差を考慮すると、CLAクラスはベンツブランドに手が届きやすいエントリーポイントとして魅力的ですが、オプションを多く付けると価格差が縮まり、Cクラスとの選択が悩ましくなります。特に、長期保有を考える場合は、Cクラスの方がリセールバリューの安定性や総合的な満足度で優位に立つ可能性があります。
また、Aクラスとの比較も重要です。同じプラットフォームを共有するAクラスは、CLAよりも実用性が高く、価格も若干抑えられています。デザイン重視ならCLA、実用性重視ならAクラスという選択肢も考えられるでしょう。
結局のところ、CLAクラスを選ぶべきなのは、そのデザイン性に強く惹かれ、後部座席の狭さや乗り心地の硬さといったデメリットを許容できる方です。日常的に後部座席を使用する機会が多い方や、長距離移動での快適性を重視する方は、Cクラスやその他のモデルを検討した方が後悔のリスクは低いでしょう。
メルセデス・ベンツCLAクラスを購入する際、後悔を最小限に抑えるためには、事前の準備と正しい知識が不可欠です。以下に、CLAクラスを購入して満足度を高めるための具体的な対策をご紹介します。
これらの対策を講じることで、購入後の「こんなはずじゃなかった」という後悔を大幅に減らすことができるでしょう。CLAクラスは、その特性を理解し、適切な期待値を持って購入すれば、非常に満足度の高い選択となり得ます。