ITSスポットで渋滞を回避する高速道路活用術

ITSスポットで渋滞を回避する高速道路活用術

ITSスポットで高速道路を賢く活用する方法

高速道路のSA・PAの駐車場で「ITSスポット」と書かれた看板を見かけたことはあるだろうか。2009年から全国展開が始まり、現在では約1,800カ所に設置されているにもかかわらず、その認知度は驚くほど低い。実は、ETC2.0(称:ITSスポット対応カーナビ)と組み合わせることで、高速道路の使い方が根本から変わるサービスだ。


🚗 ITSスポット活用の3つのポイント
📡
最大1,000kmの渋滞情報を受信

従来のVICSが最大200km程度だった情報提供範囲を、最大1,000kmまで大幅拡大。長距離ドライブでも目的地付近の渋滞を事前に把握できる。

🛡️
事故多発地点・落下物の事前警告

首都高速では落下物が年間約5万件(10分に1件)発生。ITSスポットはその情報をリアルタイムで配信し、ドライバーに音声・画像で事前通知する。

🏪
道の駅に立ち寄っても追加料金ゼロ

ETC2.0搭載車なら、指定された道の駅に一時退出して2時間以内に再進入すれば、高速道路を降りずに走った場合と同じ料金が適用される。


ITSスポットとは何か・ETC2.0との関係を正しく理解する





「ITSスポット」という名前は10年以上前から存在するが、実は現在は「ETC2.0路側機」という名称に統一されている。ITSとは「Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)」の略で、人・道路・車を情報でつなぐ技術のことだ。このシステムの要となるのが、高速道路の路側に設置されたアンテナ設備、すなわちITSスポット(ETC2.0路側機)である。


仕組みはシンプルだ。車に搭載したETC2.0対応車載器とITSスポットの間で、5.8GHz帯のDSRC(狭域通信)という高速・大容量の無線通信をおこなう。これにより、従来の一方通行な情報提供とは異なり、クルマ側からも情報を送れる双方向通信が実現している。


以前使われていた「ITSスポットサービス」という呼び方と「ETC2.0」は、ほぼ同じ機能を指す。つまり今の言い方では、


- ITSスポット → 道路側の通信アンテナ設備(路側機)
- ETC2.0 → 車載側の機器と、そのサービス全般


この2つがセットでサービスを形成している。設置場所は全国の高速道路本線上が中心で、SA・PA駐車場や道の駅にも展開されている。2009年に首都高速に初めて設置され、その後2011年に全国展開が始まった。つまり登場から15年以上が経過しているが、利用率は2024年時点でも高速利用全体の3分の1強にとどまっているのが現状だ。


ETC2.0対応車載器には、「カーナビ連動型」と「発話型(単体型)」の2種類がある。カーナビ連動型はナビの画面に渋滞情報や静止画像を表示できる一方、発話型はカーナビなしでも音声だけでETC2.0サービスを利用できる。カーナビを持っていないドライバーでも、発話型を選べばITSスポットのサービスをすぐに活用できるということだ。


国土交通省「ITSスポットサービス」公式ページ(設置数・サービス内容の詳細確認に有用)


ITSスポットの渋滞回避支援・ダイナミックルートガイダンスを活用する

ITSスポットの目玉機能のひとつが「ダイナミックルートガイダンス」だ。その最大の特徴は、情報提供範囲が最大1,000kmに及ぶことにある。東京から大阪(約500km)を大幅に超える広さだ。


従来のVICS(FM多重放送)では都道府県単位の情報しか受け取れず、隣の県の道路状況すら把握できない「不感地域」が存在していた。電波ビーコンで受信できる情報も最大約200km程度。それに対してITSスポットでは、例えば東京から名古屋へ向かう際に東名高速と中央道どちらが空いているかをリアルタイムで比較し、最適なルートを自動的に案内してくれる。


実際のメリットはこうだ。


- 首都圏内の高速道路全線(往復で約600km)の情報が一括受信できる
- ドライブ中にITSスポットを通過するたびに情報が更新される
- 渋滞の変化に合わせてカーナビがリアルタイムでルートを再計算する


つまり最速ルートが原則です。一度設定すれば終わりではなく、走行中ずっと最適化が続く。GWや年末年始などの大型連休では、このリアルタイム更新が特に有効に機能する。高速道路上のどこにいても最新情報に基づくルート案内が受けられるのは、スマートフォンのナビアプリにはない強みだ。


渋滞回避に役立つ情報として、SA・PAの混雑状況も受け取れる。前方2〜3カ所分のSA・PAがどの程度混んでいるかを事前に知ることで、休憩場所の選択もスムーズになる。


ETC総合情報ポータルサイト(ETC2.0のサービス内容と通信の仕組みの確認に有用)


ITSスポットの安全運転支援機能で事故・落下物リスクを事前に回避する

ITSスポットのもうひとつの重要な機能が「安全運転支援」だ。これは渋滞回避とは別に、高速道路上の危険情報をドライバーに事前通知するサービスである。


まず知っておきたいのが、首都高速道路での落下物の実態だ。年間約5万件、1日平均140件、10分に1件のペースで落下物が発生している。うっかり気づかずに踏んでしまえば、タイヤバーストや重大事故につながる。ITSスポットはテレビカメラやパトロールが収集した落下物情報を交通管制センターで集約し、その情報をドライバーに先んじて届ける仕組みだ。


事故多発地点での注意喚起も効果は大きい。代表例が首都高速の「参宮橋カーブ」で、急カーブの先に渋滞末尾が突然現れやすい構造の場所だ。ここでITSスポットが渋滞情報をドライバーに事前提供した結果、追突事故などが約6割削減されたという実績がある。首都高速のワースト20箇所は全体の道路延長わずか2%に過ぎないが、そこで全事故の約2割が集中して発生している。


提供される情報は以下のとおりだ。


| 情報の種類 | 内容 |
|-----------|------|
| 落下物・障害物 | 前方の落下物情報を音声・簡易図形で通知 |
| 渋滞末尾情報 | カーブやトンネル先の見えない渋滞を事前警告 |
| 画像情報 | 雪・霧・トンネル内混雑の静止画を提供 |
| 地震・災害情報 | 緊急規制情報を配信し自動車を適切に誘導 |


これは使えそうです。特に「トンネル出口直後の渋滞末尾への追突」は高速道路事故の典型パターンであり、事前に音声で「前方渋滞注意」と案内が流れるだけで反応速度が大幅に向上する。天候が悪い日や夜間走行時には、画像情報による視覚的な確認も安心感につながる。


首都高速道路「事故・落下物の現状」(落下物件数・事故件数の公式データ確認に有用)


道の駅に寄っても高速料金が変わらない「賢い料金」の仕組みと条件

ETC2.0(ITSスポット)ならではのメリットとして特筆すべきが、「高速道路からの一時退出」サービス、通称「賢い料金」だ。これは知っているだけで数百〜数千円単位の節約になる制度である。


通常、高速道路を一旦降りて再び乗り直すと、新たな初乗り料金が加算される。しかしETC2.0搭載車に限り、指定された道の駅に立ち寄って2時間以内に同じインターチェンジから再進入すれば、高速道路を降りずに走り続けた場合と同じ料金が適用される仕組みだ。


利用のための条件は4つある。


1. 🔁 全行程で同一のETCカードを使用する
2. 📍 対象インターチェンジ(またはスマートIC)での乗り直しで、順方向のみ
3. 🏪 対象の道の駅に必ず立ち寄る(出入口付近のETC2.0アンテナを通過する)
4. ⏱ 退出後2時間以内に同一インターチェンジから再流入する


対象の道の駅への立ち寄りが条件です。ただ周辺道路を走っているだけでは適用されず、必ず対象道の駅のETC2.0アンテナ下を通過することが必要な点に注意が必要だ。


この制度が誕生した背景には、休憩施設の空白区間問題がある。高速道路上のSA・PAが25km以上間隔が空いている区間が各地に存在し、ドライバーが長時間休憩できない状況が続いていた。そこで高速道路に隣接する道の駅を「実質的な休憩施設」として活用できるよう、この社会実験が実施されている。


現在も対象エリアは拡大中で、全国27カ所(記事執筆時点)での実施が確認されている。なお2022年7月より、当初3時間だった一時退出可能時間が2時間へ変更された。この変更を知らないと、時間をオーバーして通常料金が請求される可能性があるので注意したい。


ETC総合情報ポータルサイト「一時退出・再進入」ページ(対象箇所・条件の詳細確認に有用)


圏央道で年間7万9,200円節約も可能なETC2.0割引の実態

ITSスポット(ETC2.0)の経済的なメリットのなかで、見落とされがちなのが「圏央道割引」だ。ETC2.0搭載車だけに適用される専用割引で、圏央道の一定区間で通常のETC料金よりも約2割安くなる。


対象となる主な路線は以下のとおりだ。


- 圏央道(茅ヶ崎JCT〜海老名南JCT、海老名〜木更津JCT)
- 新湘南バイパス(藤沢〜茅ヶ崎JCT)
- 東海環状自動車道(約1.5割引)


具体的な節約額を見てみよう。入間IC〜境古河IC(62.1km)の区間を普通車でETC2.0を使って走ると1,850円で、ETC2.0なしでは2,180円。1回あたり330円の差が生まれる。この区間を月20回利用する場合、年間節約額は79,200円(330円×20回×12カ月)になる計算だ。これは大きいですね。


| 区間 | ETC2.0あり | ETC2.0なし | 差額 |
|------|-----------|-----------|------|
| 大井田⇔相模原(44.9km)普通車 | 1,390円 | 1,500円 | 110円 |
| 入間⇔境古河(62.1km)普通車 | 1,850円 | 2,180円 | 330円 |
| つくば中央⇔神崎(34.4km)普通車 | 1,100円 | 1,280円 | 180円 |
| 松尾横芝⇔木更津東(59.0km)普通車 | 1,750円 | 2,070円 | 320円 |


注意点がひとつある。料金所の表示器に割引後の料金は表示されず、クレジットカード請求時に事後的に割引が適用される仕組みだ。「料金所でいつもと同じ金額が表示されたから割引されていないのでは?」と勘違いするドライバーも多いが、明細を確認すると正しく割引されている。


他のETC割引(深夜割引・休日割引など)との重複適用はできないが、割引率の高いほうが自動的に選ばれる仕組みになっている。圏央道をよく使うドライバーなら、ETC2.0への切り替えはほぼ必須といえるレベルのメリットだ。


ETC総合情報ポータルサイト「圏央道割引」(割引条件・対象区間の確認に有用)


ETC2.0車載器の選び方と2030年問題への備え方

ITSスポットのサービスを活用するためには、ETC2.0対応の車載器が必要だ。現在市場に出回っているETC2.0車載器は大きく2タイプに分かれる。


① カーナビ連動型
既存のETC2.0対応カーナビと接続し、渋滞情報や静止画像をナビの画面に表示できる。ダイナミックルートガイダンスなどの視覚的サービスをフルに活用したい場合はこちらだ。ただし、カーナビとの互換性確認が必須で、メーカーごとに専用機が異なる場合もある。


② 発話型(単体型)
カーナビがなくてもETC2.0サービスを音声で受けられる。GPS内蔵で位置情報も把握できる。設置が比較的簡単で、既存カーナビの種類を問わず使える汎用性が強みだ。画像表示はできないが、運転中の情報収集という目的なら十分に機能する。


導入コストの目安は以下のとおりだ。


| 費用の種類 | 目安 |
|-----------|------|
| 車載器本体 | 1万円台後半〜3万円程度 |
| 取付工賃 | 数千円〜1万円程度 |
| セットアップ費用 | 3,000円程度 |
| 合計目安 | 3万〜4万円程度 |


導入費用が3〜4万円かかることを考えると、圏央道を月に10回以上利用するドライバーなら1年以内に回収できる計算だ。コストが条件です。


もうひとつ見逃せないのが「2030年問題」だ。ETCのセキュリティ規格が変更される予定で、旧規格の車載器は2030年頃を目安に高速道路のETCゲートを通過できなくなる可能性がある。車載器管理番号の先頭1桁が「0」の機種は旧規格で、「1」が新規格(ETC2.0対応)の目安となっている。現在の車載器に「DSRC」ロゴが記載されている場合も旧規格だ。早めに確認しておいて損はない。


国土交通省「ITSスポットサービス」概要ページ(設置数・制度概要の確認に有用)




自動車ビッグデータでビジネスが変わる! プローブカー最前線 (NextPublishing)