
日産セレナの燃費に関する不満は多くのオーナーから聞かれます。特に「カタログ値と実際の燃費が大きく違う」という声が目立ちます。実際のところ、セレナのカタログ燃費と実燃費の乖離は約65%程度と言われており、ライバル車の一般的な70〜75%よりも差が大きい傾向にあります。
具体的な数値で見てみると、C26系S-HYBRIDのJC08モードでのカタログ燃費は15.4〜16.4km/Lですが、実燃費は10.0〜11.0km/L程度。C27系S-HYBRIDも同様に、カタログ値は15.4km/L(JC08モード)に対し、実燃費は10.5〜11.5km/Lとなっています。e-POWERモデルでは、カタログ値23.4〜26.0km/L(JC08モード)に対し、実燃費は16.0〜17.0km/L程度です。
街乗りが中心のユーザーからは「リッター5〜6kmしか出ない」という厳しい声も聞かれます。これは渋滞や頻繁な発進停止、信号待ちの多い都市部での使用環境が影響しています。
セレナS-HYBRIDが「ハイブリッド」という名前の割に燃費が良くないと感じるユーザーが多い理由は、そのシステムの特性にあります。セレナのS-HYBRIDは「スマートシンプルハイブリッド」の略で、トヨタのハイブリッドシステムのような本格的なものではありません。
このシステムは、減速時のエネルギーを回生して蓄え、アイドリングストップの時間を延ばしたり、発進時の1秒程度のアシストに使用するという、非常にシンプルな仕組みです。モーターによる走行はできず、あくまでエンジンをサポートする補助的な役割に留まっています。
具体的な構成としては、通常より少し大きめのバッテリーと小型のモーターを搭載し、低コストで実現できる反面、燃費改善効果は限定的です。このため、「ハイブリッド」という名前から期待する燃費性能と実際の性能にギャップが生じ、「燃費が悪すぎる」という印象につながっているのです。
ライバル車のノアやステップワゴンが採用しているダウンサイジングターボエンジンなどの燃費改善技術と比較しても、S-HYBRIDの燃費改善効果は控えめであり、この点も「燃費が悪い」と感じる要因となっています。
セレナe-POWERは街乗りでは優れた燃費性能を発揮しますが、高速道路走行時や冬季には燃費が大きく悪化することが知られています。これはe-POWERシステムの特性に起因する現象です。
e-POWERは1.2Lの小型エンジンで発電し、その電力でモーターを駆動するシリーズハイブリッドシステムです。街中の低速走行では効率的に機能しますが、高速道路、特に100km/h以上の速度域では状況が変わります。高速走行時にはバッテリーの電力だけでは足りず、小排気量エンジンがフル稼働して発電を続けることになります。この状態では1.2Lという小さなエンジンに大きな負荷がかかり、燃費が悪化するのです。
また、冬季には暖房用の熱を確保するためにエンジンを始動する必要があります。通常のガソリン車ではエンジンの廃熱を暖房に利用できますが、e-POWERではエンジンが発電専用のため、暖房のためだけにエンジンを動かすことになり、燃費効率が下がります。
実際の数値で見ると、e-POWERの高速道路での燃費は17.1〜17.8km/L(カタログ値・WLTCモード)ですが、実際には速度が上がるほど燃費は低下し、冬季の暖房使用時にはさらに悪化することがあります。
セレナの燃費が「異常に悪い」と言われることがありますが、実際にライバル車と比較するとどうなのでしょうか。同クラスの主要なライバルであるトヨタ・ノアとホンダ・ステップワゴンと比較してみましょう。
ガソリン車の実燃費を比較すると、セレナが10.0〜11.0km/L、ノアが10.0〜11.0km/L、ステップワゴンが11.0〜12.0km/Lとなっています。セレナはノアとほぼ同等で、ステップワゴンよりやや劣る程度です。この差は「異常」というほどではなく、ミニバンとしては標準的な範囲と言えるでしょう。
一方、ハイブリッドモデルでは差が出てきます。セレナe-POWERの実燃費が16.0〜17.0km/Lに対し、ノアハイブリッドとステップワゴンハイブリッドはともに17.0〜18.0km/Lと、セレナよりも1km/L程度良い結果となっています。
新型ノア(2022年以降)については、カタログ値でガソリン車が約15km/L、ハイブリッドが約23km/Lと、さらに燃費が向上しており、セレナとの差は広がっている可能性があります。
ただし、これらの差は車両特性や使用環境によるものであり、「異常に悪い」というほどではありません。ミニバンという車格を考慮すれば、セレナの燃費は決して突出して悪いわけではないのです。
セレナに搭載されているECOモードは、実際に燃費向上に効果があるのでしょうか。意外なことに、特にC26セレナでは、ECOモードを使用すると逆に燃費が悪化するケースがあることが報告されています。
ECOモードの主な機能は、アクセルペダルの反応を鈍くして急加速を抑制し、エアコンの効きを弱めることで燃費向上を図るものです。しかし、アクセルの反応が鈍くなることで、必要な加速力を得るためにアクセルを深く踏み込む傾向が生じ、結果的に燃料消費が増えてしまうことがあります。
実際のオーナーレポートによると、C26セレナでECOモードをオフにしたところ、燃費が改善したという事例があります。あるオーナーは、ECOモードをオフにして長距離走行したところ、燃費がリッター11.46kmに改善したと報告しています。
ECOモードの効果については、「視覚的にECOな気分にさせることで、なんとなく低燃費意識を持たせる疑似体験装置」という指摘もあります。ECOメーターが黄緑色のゾーンに伸びることで、ドライバーに低燃費運転をしているという錯覚を与え、結果的にエコドライブへの意識を高める効果はあるかもしれません。
しかし、実際の燃費向上を目指すなら、ECOモードに頼るよりも、穏やかな加速、一定速度の維持、早めのアクセルオフなど、エコドライブの基本テクニックを実践する方が効果的です。特にC26セレナでは、「ECOモードの解除」が燃費改善の一つの方法となる可能性があります。
セレナの燃費が悪いと感じている方に向けて、実践的な燃費改善方法をご紹介します。これらの方法は、特別な改造なしで実施できるものばかりです。
実際のオーナーレポートによると、これらの対策を組み合わせることで、街乗りで1〜2km/L、高速道路で2〜3km/Lの燃費改善が見られたケースもあります。特に運転習慣の改善は、即効性はないものの長期的には大きな効果が期待できます。
また、カーナビの燃費計測機能やスマートフォンアプリを活用して、自分の運転と燃費の関係を把握することも有効です。データに基づいて運転習慣を改善していくことで、徐々に燃費を向上させることができるでしょう。
日産公式サイトのエコドライブ情報 - より詳細なエコドライブのコツが紹介されています
セレナの燃費問題を理解した上で、次期モデル(C28など)の購入を検討する際のポイントをまとめます。燃費だけでなく、総合的な視点から判断することが重要です。
まず、セレナの燃費が「悪すぎる」と言われる主な理由は、カタログ値と実燃費の乖離が大きいことにあります。次期モデルを検討する際は、カタログ値を鵜呑みにせず、実燃費を基準に考えることが賢明です。C28セレナe-POWERの場合、カタログ値の約70〜80%程度の実燃費を想定しておくと良いでしょう。
次に、自分の使用環境に合ったモデル選びが重要です。主に街乗りが中心なら、e-POWERモデルが燃費面で有利です。一方、高速道路の利用が多い場合は、e-POWERの燃費優位性が薄れることを考慮する必要があります。
また、燃費だけでなく、総所有コスト(TCO)の観点から判断することも大切です。e-POWERモデルは車両価格が高いため、燃費の良さだけで元を取れるかどうかを計算してみましょう。年間走行距離が少ない場合、ガソリンモデルの方がトータルコストで有利になることもあります。
さらに、2025年以降に予定されている新型セレナでは、燃費性能の向上が期待されています。特にe-POWERシステムは進化を続けており、高速道路での燃費や冬季の燃費低下といった弱点が改善される可能性があります。購入を急がない場合は、次期モデルの情報を待つのも一つの選択肢です。
最後に、値引きや購入タイミングも重要です。新型セレナ(C28)は発売から1年以上経過していますが、特にe-POWER車は値引き幅が抑えられている傾向があります。ただし、モデル末期になると値引き交渉の余地が広がることもあるため、購入タイミングも検討材料になります。
最新のセレナC28の燃費性能に関する詳細レポート - 実際のオーナーによる燃費データも掲載
燃費は重要な要素ですが、セレナの魅力は広い室内空間や使い勝手の良さにもあります。燃費だけでなく、車としての総合的な価値を考慮して判断することをおすすめします。