プロペラシャフトグリス種類と選び方や交換時期

プロペラシャフトグリス種類と選び方や交換時期

プロペラシャフトグリス種類と特性

この記事で分かること
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グリスの基本知識

リチウム、ウレア、モリブデンなど各種グリスの特徴と使用温度範囲を解説

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プロペラシャフトに最適なグリス

車種や使用環境に応じた適切なグリスの選び方

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交換時期とメンテナンス方法

給脂の頻度や正しいグリスアップの手順

プロペラシャフトに使われる主なグリス種類


タミヤ HOP-UP OPTIONS OP-439 アンチウエアグリス

 

プロペラシャフトの潤滑に使用されるグリスには、主にリチウムグリス、モリブデングリス、ウレアグリスの3種類があります。最も一般的なのはリチウムグリスで、万能グリースとして幅広い用途に対応できる特性を持っています。リチウム石けんを増ちょう剤とし、耐水性・耐熱性・機械安定性に優れているため、高速ベアリングから一般的な摺動部まで使用可能です。
参考)プロペラシャフトのグリスアップ・点検を実施

モリブデングリスは、リチウムグリスに二硫化モリブデンを添加したもので、極圧性に優れています。金属面への付着性が高く、油切れが発生した際でもモリブデン粒子が残るため、かじりや摩耗、焼付を防ぐ効果があります。ただし、ゴム製品への攻撃性があるため、ゴム部品との接触箇所には使用を避ける必要があります。
参考)バイク整備で使うグリス【リチウム、ウレア、モリブデン、シリコ…

ウレアグリスは、リチウム系グリスよりも耐水性・耐熱性に優れた非石けん系グリスです。最高使用可能温度は180℃と高く、製鉄設備や圧延機などの過酷な環境でも使用されています。プロペラシャフトでは、特に高温環境や水への曝露が多い使用条件下で選択されることがあります。
参考)グリースの種類と特長 【通販モノタロウ】

プロペラシャフトグリスの耐熱性と使用温度範囲

グリスの耐熱性は増ちょう剤の種類によって大きく異なり、プロペラシャフトの使用環境に応じた選択が重要です。リチウム石けんグリスの使用可能温度範囲は-15℃~130℃が一般的で、通常の走行条件では十分な性能を発揮します。リチウムコンプレックスグリスは滴点が260℃以上あり、最高使用可能温度は150℃まで拡大されます。
参考)グリースの分類と特性

ウレアグリスの使用可能温度範囲は-30℃~200℃と広く、芳香族ジウレアタイプでは最高180℃まで安定した性能を維持します。高温条件下での長期使用や、温度変化の激しい環境では、ウレア系グリスが推奨されることが多くあります。ただし、耐熱性が高いグリスほど価格も高くなる傾向があるため、使用環境と予算のバランスを考慮する必要があります。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%9A%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B9/

メーカー指定のグリスを使用することも重要で、例えば日野自動車ではリチウム系ベアリンググリース(推奨銘柄:日野純正ブルーリボンベアリンググリース)を指定しています。シャーシーグリースなど他の種類のグリスを使用すると、プロペラシャフトの性能や寿命に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
参考)https://www.hino.co.jp/ts/vehicle_maintenance/pdf/20190819.pdf

プロペラシャフトグリスの耐水性と防錆性能

プロペラシャフトは車両下部に位置するため、水や泥、塩分などへの曝露が避けられず、耐水性と防錆性能が重要な選定基準となります。リチウム石けんグリスは耐水性が良好で、水を使用する箇所の潤滑にも適しています。特にリチウムコンプレックスグリスは耐水性・防錆性に優れ、雨天走行や雪道走行が多い地域での使用に適しています。​
アルミニウムコンプレックスグリスは、耐水性が非常に優れており、はっ水型として知られています。200℃以上の滴点を持ち、極めて細かい繊維構造により水分の侵入を防ぎます。水の中を走行した際は、すぐに給脂するよう取扱説明書に記載されている車種もあり、雪の降る地域で頻繁に下回りの洗浄をする場合もマメな給脂が推奨されます。​
ウレアグリスも耐水性に非常に優れており、特に芳香族ジウレアは密封性に適した特性を持ちます。グリスニップル周辺の泥やほこりを取ってから給脂を行い、古いグリースが全て排出されて新しいグリースが出てくるまで給脂することで、防錆性能を最大限に発揮させることができます。
参考)https://www.hino.co.jp/ts/vehicle_maintenance/pdf/20211111.pdf

プロペラシャフトグリス交換時期と給脂頻度

プロペラシャフトのグリス交換時期は、車種や使用環境によって異なりますが、一般的には車検時の2年に1回が基本とされています。しかし、日野自動車やUDトラックスなどの商用車では、12ヶ月ごとのガタ点検と定期的な給脂が法令で定められています。トラックの場合、走行距離ベースでは3,000~5,000kmごと、または1~2ヶ月ごとの給脂が推奨されます。
参考)https://pankulu.pepper.jp/peragurisu.htm

重負荷や長時間運転を行う車両では、より短い間隔でのグリスアップが必要です。泥やほこりの多い環境で運行する場合、グリスが汚染されやすいため頻度を上げる必要があり、過酷な条件では1,000~2,000kmごとの給脂が推奨されます。ハイラックスGUN125のように、サンバイザー裏に注意書きがあり、必ず1年ごとの点検が指定されている車種もあります。
参考)トラックのグリスアップの頻度について解説

フロント側のプロペラシャフトはグリスが切れやすい傾向があり、アクセルを離したときに「コ~ン」という音が出る場合は給脂のタイミングです。ただし、一部の車種ではグリス補充ができず、プロペラシャフトごと交換になってしまう場合もあるため、事前に確認が必要です。定期点検を正しく行わなかった場合、走行不能や部品脱落等の重大な故障が発生するおそれがあります。
参考)https://www.hino.co.jp/ts/vehicle_maintenance/pdf/20191127.pdf

プロペラシャフトグリスアップ作業での注意点と独自視点

プロペラシャフトのグリスアップ作業では、いくつかの重要な注意点があります。まず、ガタの検出をしやすくするため、グリスの給脂は点検完了後に実施する必要があります。グリスニップル及び塗布部位の泥やほこりを取ってから給脂を行い、古いグリースが全て排出され、新しいグリースが排出されるまで給脂を続けます。​
スプラインヨーク(スリーブヨークとも呼ばれる)へのグリスアップには特に注意が必要です。ここにグリスを入れすぎると、プロペラシャフトが縮めなくなり、場合によってはシャフトが破損することがあります。車種によって適切な給脂量が異なるため、ディーラーで確認するか、取扱説明書を参照することが推奨されます。​
あまり知られていない独自視点として、グリスの混合使用には注意が必要です。異なる種類のグリスを混ぜると、増ちょう剤の構造が破壊され、性能が著しく低下する可能性があります。例えば、リチウムグリスとウレアグリスを混合すると、せん断安定性や耐熱性が損なわれることがあるため、給脂の際は既存のグリスを完全に排出することが重要です。また、10万キロを超えたプロペラシャフトでは、異音や振動が出る前にメンテナンスを行うことで、ユニバーサルジョイントの寿命を延ばすことができます。
参考)https://ameblo.jp/729-1839/entry-12711771471.html

日野自動車公式:プロペラシャフト給脂 指定グリース使用のお願い(PDFファイル)
商用車における正しいグリスの種類と給脂方法について、メーカーの公式見解が記載されています。

 

モノタロウ:グリースの種類と特長
増ちょう剤別、基油別のグリスの詳細な特性比較表があり、グリス選びの参考になります。

 

協同油脂:グリースの分類と特性
石けん系・非石けん系グリスの最高使用可能温度や耐水性、せん断安定性の比較データが掲載されています。

 

 


タミヤ TRFパーツ 42130 VGスラストベアリンググリス TRFシリーズ