
jc08モードと10・15モードは、どちらも国土交通省が定めた燃費測定方法ですが、測定条件に大きな違いがあります。
参考)燃費表示が10・15モード、JC08モード、WLTCモードと…
10・15モードは1991年に導入された測定方法で、当時の自動車使用環境を元に定められました。 市街地を想定した10モード(最高速度40km/h)と郊外を想定した15モード(最高速度70km/h)を組み合わせ、平均速度は22.7km/h、総所要時間は660秒、走行距離は4.165kmという条件で測定されていました。
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一方、jc08モードは2006年に策定された日本独自の燃費試験モードで、2011年4月以降に型式指定を受けるクルマから正式に採用されました。 より実際の使用状況に近づけるため、最高速度は81.6km/h、平均速度は24.4km/h、所要時間は1204秒、走行距離は8.172kmと、10・15モードに比べて測定時間を倍近く長くし、より高速な走行パターンで測定するようになりました。
参考)https://www.faq.mazda.com/faq/show/6635?category_id=1274amp;site_domain=default
jc08モードが10・15モードより燃費値が低くなる(厳しくなる)主な理由は、測定条件がより実走行に近づいたためです。
最も大きな違いは、エンジンの状態からスタートする測定方法です。10・15モードはエンジンが完全に温まった状態(ホットスタート)のみで測定していましたが、jc08モードではエンジンが冷えた状態(コールドスタート)からの測定が全体の25%程度加えられました。 コールドスタート時はオイルの粘度が高くエンジン内部の摩擦が増えるため、不完全燃焼が起こりやすく通常より多くの燃料が必要になります。
参考)WLTCモードとJC08モードの違いを解説!実燃費に近いのは…
さらに、jc08モードでは速度変化をより細かく規定し、加減速のパターンを実際の走行に近づけました。 これにより、クルマによって異なりますが、一般的にjc08モードの燃費値は10・15モードよりおおむね1割ほど低くなる傾向がありました。 例えば、トヨタ・プリウスでは10・15モードで38.0km/L、jc08モードで32.6km/Lという差が生じています。
参考)JC08モード - Wikipedia
jc08モードでは、シャーシダイナモという測定装置を用いて屋内で燃費を測定します。 事前に走行抵抗を測定し、試験時に同等の負荷をかけることで実際の走行状態に近づけています。
測定条件の詳細を見ると、最高速度は81.6km/h、平均速度は24.4km/h、総所要時間は1204秒(約20分)、走行距離は8.172kmとなっています。 これは10・15モードの最高速度70km/hから約12km/h引き上げられ、平均速度も1.7km/h高められています。
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速度パターンだけでなく、MT車に適用されるギアポジションも定められており、これに従い変速しなければなりません(AT車はDレンジ固定であればどのギアに入っていてもよい)。 また、車両重量の区分も10・15モードよりも細分化され、より実際の走行状態を反映するよう改善されました。
なお、測定時には搭載電装品の電源はOFF、エアコンもOFFの状態で行われるため、これらを使用する実走行時とは条件が異なります。
参考)https://spectank.jp/nen/nen02.html
JAF公式サイトでは、10・15モード、JC08モード、WLTCモードの変遷について詳しく解説されています。各モードの比較イメージも掲載されており、燃費表示の理解に役立ちます。
10・15モードは、市街地を想定した「10モード」と郊外を想定した「15モード」の2つの走行パターンで構成されています。
参考)クルマの燃費表示「10・15モード」って何? - クルマの大…
10モードは最高速度40km/hで、停止や発進、加速を繰り返すストップ&ゴーの多い平均速度18.7km/hという低速な走行パターンです。 具体的には、アイドリング20秒→20km/hまで加速7秒→20km/h走行15秒→減速して停止7秒→アイドリング16秒→40km/hまで加速14秒→40km/h走行15秒→40km/hから20km/hへ減速10秒→20km/hから40km/hへ加速12秒→減速して停止17秒、という一連の流れを繰り返します。
参考)https://www.goo-net.com/knowledge/07001/
15モードは平均速度35.5km/hと10モードより高速な走行パターンで、最高速度は70km/hに達します。 アイドリング65秒から始まり、50km/h、60km/h、70km/hと段階的に加速と定速走行を繰り返し、最後に停止するまでの約135秒のパターンです。
10・15モード燃費は、10モードでの測定を3回、15モードでの測定を1回行った結果を、走行距離の比率に応じて重み付けして算出されます。 ただし、エンジンが完全に暖まった状態からのみ測定するため、実際の走行条件とはかなり乖離があり、これが実燃費との差を生む大きな要因となっていました。
jc08モードは10・15モードより実走行に近づいたものの、さらに正確な燃費表示を求める声が高まり、2018年10月から国際基準であるWLTCモード(Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle)が全面導入されました。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/wltc-mode/
WLTCモードの最大の特徴は、燃費を「市街地モード」「郊外モード」「高速道路モード」の3つに分けて測定・表示する点です。 市街地モードは信号や渋滞の影響を受ける比較的低速な走行、郊外モードは信号や渋滞の影響をあまり受けない走行、高速道路モードは高速道路等での走行を想定しています。
参考)WLTCモードとJC08モードの違いとは?|新車のカーリース…
測定条件もjc08モードからさらに厳しくなり、最高速度は97km/h付近、測定時間は約25分、測定距離は約23kmと大幅に拡大されました。 さらに、WLTCモードではコールドスタートの比率が100%となり、jc08モードの25%から大幅に増加しています。 これにより、カタログ燃費と実燃費の差がさらに縮小し、ユーザーは自分の使用環境に合わせて燃費性能を比較できるようになりました。
参考)WLTCモードとは?実燃費との違い・測定方法・JC08モード…
国際基準に沿った表示となったことで、海外メーカー車とも公平に燃費性能を比較できるようになったことも大きなメリットです。
カタログ燃費と実燃費に差が出る最も大きな理由は、測定条件と実際の走行環境の違いです。
参考)カタログ燃費と実燃費に差が出てしまうのはなぜか? - web…
燃費測定は屋内のシャーシダイナモという装置で行われ、温度や湿度が管理された環境下で実施されます。 エアコンや電装品はOFFの状態で測定されるため、実際にエアコンを使用したり、カーナビやオーディオを使ったりする走行時とは条件が大きく異なります。
また、カタログ燃費は一定のパターンで加減速を行う理想的な走行を前提としていますが、実際の道路では信号待ちや渋滞、急な加減速が頻繁に発生します。 特に市街地走行では、ストップ&ゴーが多く、カタログ燃費より大幅に悪化することがあります。
さらに、運転の仕方による影響も大きく、急発進や急加速を繰り返すと燃費は悪化します。 車両の積載量や乗車人数、タイヤの空気圧、気温(特に冬場はコールドスタートの頻度が高い)なども実燃費に影響を与える要因です。
参考)平均燃費・実燃費の高い車は? 燃費が悪くなる原因や改善のコツ…
ただし、WLTCモードの導入により、カタログ燃費と実燃費の差は以前と比べてかなり小さくなってきています。 走行環境別の燃費表示により、ユーザーは自分の使い方に合った燃費を参考にできるようになりました。
参考)クルマの「カタログ燃費」は本当か? 実燃費と差が生じる理由は…
グーネットの記事では、10・15モード燃費とJC08モード燃費の違いについて初心者にも分かりやすく解説されています。中古車選びで燃費を重視する際の参考情報としても役立ちます。
各燃費測定モードの主要な数値を比較すると、測定条件がどのように進化してきたかが一目で分かります。
測定項目 | 10・15モード | JC08モード | WLTCモード |
---|---|---|---|
最高速度 | 70km/h | 81.6km/h | 約97km/h |
平均速度 | 22.7km/h | 24.4km/h | 約36.2km/h |
所要時間 | 660秒(約11分) | 1204秒(約20分) | 約1800秒(約30分) |
走行距離 | 4.165km | 8.172km | 約23.3km |
コールドスタート | なし(0%) | あり(25%) | あり(100%) |
導入時期 | 1991年 | 2011年 | 2018年 |
この表から分かるように、時代とともに測定条件は実走行に近づいてきています。 10・15モードからjc08モードへの移行では、最高速度が約12km/h上昇し、測定時間は倍近くになりました。 さらにWLTCモードでは、測定時間が約30分、走行距離が約23kmと大幅に拡大され、コールドスタートの比率も100%となっています。
特に注目すべきは、平均速度の上昇です。10・15モードの22.7km/hからWLTCモードの約36.2km/hへと、約13.5km/hも上昇しています。 これは実際の道路での平均的な走行速度により近づいたことを意味し、カタログ燃費の信頼性向上につながっています。
また、各モードでの燃費値の差も重要です。一般的に、同じ車種で比較した場合、10・15モード>jc08モード>WLTCモードの順で燃費値が低くなる傾向があります。 例えば、トヨタ・プリウスの場合、10・15モードで38.0km/L、jc08モードで32.6km/Lと約5.4km/Lの差が生じています。
国土交通省の自動車燃費一覧では、最新のWLTCモード燃費データが公開されています。車種別の詳細な燃費情報を確認できるため、車選びの際の公式参考資料として活用できます。
車を選ぶ際に燃費性能を正しく比較するには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、比較する車種の燃費表示が同じモード(10・15モード、jc08モード、WLTCモード)で測定されているか確認することが大切です。 異なるモードで測定された燃費値を直接比較すると、正確な性能差が分からないためです。 特に中古車を検討する場合、年式によって表示されている燃費モードが異なることがあるので注意が必要です。
参考)WLTCモード、JC08モード、10・15モードとは? / …
WLTCモードで表示されている場合は、自分の主な使用環境に合わせて燃費を確認しましょう。 市街地での使用が中心なら市街地モードの数値を、高速道路を頻繁に使うなら高速道路モードの数値を重視することで、より実際の使用状況に近い燃費を予測できます。
参考)技術解説−中・軽量車の燃費試験法と燃費基準(7)
また、カタログ燃費はあくまで目安であり、実際の燃費は運転の仕方や使用環境によって大きく変わることを理解しておくことが重要です。 急発進や急加速を避け、適切な車間距離を保つことで、実燃費をカタログ値に近づけることができます。
さらに、同じ車種でも、グレードや装備、車両重量の違いによって燃費は変わります。 例えば、2WD(FF)車と4WD車では燃費が異なりますし、オプション装備を多く付けると車重が増えて燃費が悪化する可能性があります。 そのため、具体的なグレードや装備内容まで確認して比較することが推奨されます。
最後に、e燃費などのユーザー投稿型の実燃費情報サイトを参考にするのも有効な方法です。 実際のオーナーの燃費データを確認することで、カタログ燃費と実燃費の差をより正確に把握できます。
参考)車種別 10・15モード 燃費達成率ランキング - e燃費