
スバルWRX S4は、その名の通り圧倒的な加速性能を持つスポーツセダンです。2.4リッターの水平対向4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力275馬力、最大トルク375Nmという強力なパワーを発揮します。この高出力エンジンにより、WRX S4は0-100km/hの加速を約6.5秒で達成。さらにローンチコントロールを使用すれば、6秒を切るタイムも可能とされています。
加速性能の特徴として特筆すべきは、最大トルクが2000〜4800rpmという広い回転域で発揮される点です。これにより、日常走行の実用域でも力強い加速を体感できます。中間加速も優れており、40〜70km/hの加速ではターボラグをほとんど感じることなく、スムーズな加速が可能です。
最高速度については、公式発表はありませんが、一般的に220〜230km/h程度と推測されています。スピードメーターは280km/hまで刻まれていますが、実際にはリミッターが設定されているため、純正状態ではその速度に達することは難しいでしょう。
このような高性能を支えているのが、スバル独自の「シンメトリカルAWD(全輪駆動)」システムです。このシステムは路面状況に応じてトルクを最適に配分し、高いトラクションと安定性を提供します。特にコーナリング時の安定性が向上し、高速走行でも安心感のある走りを実現しています。
WRX S4の魅力的な性能は、一方で日常使いにおいては「速すぎる」と感じる場面も少なくありません。実際に、WRX S4を検索すると「後悔」というサジェストが表示されるほど、この点は多くのオーナーが直面する課題となっています。
まず第一に、街中や狭い道での取り扱いの難しさが挙げられます。2.4Lターボエンジンは少しアクセルを踏み込むだけで強い加速を生み出すため、特に渋滞や狭い道路では扱いにくさを感じることがあります。パワーの出力が唐突になるシチュエーションでは、慣れるまでに時間がかかるでしょう。
第二に、燃費の悪さが日常使いでの大きな後悔ポイントとなります。カタログ燃費ではWLTCモードで10.8km/Lと表記されていますが、実際の街乗りでは8〜9km/L程度、渋滞が多い都市部では7km/L台まで落ち込むことも少なくありません。これはWRX S4の魅力である加速性能や車重(約1,610kg)、そしてスポーツセッティングによるものですが、日常的な使用では給油の頻度が増え、燃料代というランニングコストが大きな負担となります。
第三に、維持費の高さも見逃せません。ハイオク指定の燃料に加え、高性能車特有のメンテナンスコストがかかります。タイヤやブレーキパッドなどの消耗品も通常の車より早く摩耗する傾向があり、定期的な交換が必要になるでしょう。
これらの理由から、「普段は買い物や通勤でしか使わないのに、こんなに燃費が悪くて後悔している」という声や、「給油の頻度が多くて面倒」という不満も少なくありません。WRX S4の性能を活かせるシーンが限られる日常使いでは、そのハイパフォーマンスが逆に負担に感じられることがあるのです。
WRX S4の魅力を最大限に引き出す機能の一つが「ローンチコントロール」です。この機能を使うことで、通常の発進時よりもさらに素早い加速を実現することができます。具体的には、通常の発進では0-100km/h加速が約6.5秒かかるところ、ローンチコントロールを使用すると6秒を切るタイムも可能になります。
ローンチコントロールの使い方は比較的シンプルですが、正しい手順で行うことが重要です。まず、車両を完全に停止させ、ブレーキペダルをしっかりと踏み込みます。次に、SIドライブのスポーツ#モードに切り替え、VDC(横滑り防止装置)をオフにします。その状態でアクセルペダルを踏み込み、エンジン回転数を上げます。適切なタイミングでブレーキを離すと、タイヤが空転することなく最大限の加速力で発進することができます。
この機能を使うことで体験できる加速感は、まさに「速すぎる」と感じるほどの迫力があります。背中をシートに押し付けられるような強烈なGフォースは、スポーツカーならではの醍醐味と言えるでしょう。特に高速道路への合流や追い越しなど、瞬時の加速が必要な場面では、この性能が大きな安心感をもたらします。
ただし、ローンチコントロールの頻繁な使用は、トランスミッションや駆動系への負担が大きくなるため注意が必要です。特にCVT(無段変速機)を採用しているWRX S4では、過度な使用によるトランスミッションの耐久性低下が懸念されます。メーカーも頻繁な使用は推奨しておらず、特別な場面での使用に留めるべきでしょう。
WRX S4の所有を検討する際に避けて通れないのが、実燃費と維持費の問題です。高性能車の宿命とも言えますが、その走行性能の代償として経済性は犠牲になる傾向があります。
実燃費については、カタログ値ではWLTCモードで10.8km/Lとされていますが、実際の使用環境では大きく異なります。街乗りでの実燃費は8〜9km/L程度、渋滞の多い都市部では7km/L台まで落ち込むことも珍しくありません。高速道路など一定速度での巡航時には若干改善しますが、それでも10km/L前後にとどまることが多いようです。
さらに、WRX S4はハイオクガソリン指定のため、燃料代自体も割高になります。2025年4月現在のハイオク価格を考慮すると、月間走行距離1,000kmの場合、燃料代だけで月に約2万円前後の出費となるでしょう。
維持費の面では、タイヤやブレーキパッドなどの消耗品の交換頻度が一般的なセダンよりも高くなる傾向があります。特に、WRX S4の性能を活かした走りをする場合、これらの部品の摩耗は早まります。純正タイヤは高性能なものが装着されており、交換時には1セット20万円前後のコストがかかることも。
また、定期点検や車検時のメンテナンス費用も一般的なセダンより高額になりがちです。エンジンオイルやフィルター類も高性能車向けの製品が推奨されるため、交換コストは割高になります。
これらの維持費を総合すると、年間で一般的なセダンより10〜15万円程度多くの出費を覚悟する必要があるでしょう。「速さ」という魅力を手に入れる代償として、この経済的負担を受け入れられるかどうかが、WRX S4購入の重要な判断ポイントとなります。
WRX S4の「速すぎる」性能を安全に、そして最大限に楽しむためには、適切なドライビングテクニックが欠かせません。高性能車の操作には一般的な車とは異なるスキルが求められますが、基本的なテクニックを身につければ、WRX S4の真価を安全に引き出すことができます。
まず重要なのは、アクセルワークの繊細さです。WRX S4のターボエンジンは、アクセルペダルのわずかな踏み込みに対しても敏感に反応します。特に低速走行時や発進時には、急激なアクセル操作を避け、緩やかに踏み込むことで、スムーズな加速と車両コントロールが可能になります。
次に、コーナリング技術の習得も重要です。WRX S4はシンメトリカルAWDシステムにより優れたコーナリング性能を持ちますが、その性能を活かすためには適切なライン取りとブレーキングが必要です。コーナーに入る前に十分に減速し、コーナーの頂点を過ぎてから徐々にアクセルを開けていくという基本テクニックを守ることで、安定したコーナリングが可能になります。
また、WRX S4には「SI-DRIVE」というドライビングモード切替システムが搭載されています。「インテリジェント」「スポーツ」「スポーツシャープ」の3つのモードがあり、走行シーンや好みに応じて選択できます。日常走行では「インテリジェント」モードを選択することで、アクセルレスポンスがマイルドになり、扱いやすさと燃費の向上が期待できます。高速道路や山岳路などでスポーティな走りを楽しみたい場合は、「スポーツ」や「スポーツシャープ」モードに切り替えるとよいでしょう。
さらに、電子制御ダンパーの設定も走行特性に大きく影響します。「コンフォート」から「スポーツプラス」まで調整可能で、路面状況や走行シーンに合わせて最適な設定を選ぶことで、乗り心地と操縦安定性のバランスを取ることができます。
安全面では、WRX S4に搭載されている先進安全技術「アイサイト」を理解し、適切に活用することも重要です。ただし、これらの安全装備に過度に依存せず、常に周囲の状況を把握し、安全マージンを持った運転を心がけるべきです。
高性能車の運転には責任が伴います。公道では法定速度を遵守し、サーキットなどの専用施設でWRX S4の性能を存分に楽しむという使い分けも、長く安全にこの車を楽しむためのコツと言えるでしょう。
WRX S4オーナーたちの声を集めると、「速すぎる」という特性に対して賛否両論あることがわかります。実際のオーナーたちは、この車の性能をどのように評価し、どのような点で後悔や満足を感じているのでしょうか。
多くのオーナーが口を揃えて評価するのが、WRX S4の加速性能とハンドリングの良さです。「アクセルを踏むと背中がシートに押し付けられる感覚が病みつきになる」「高速道路での追い越しが驚くほど簡単」といった声が多く聞かれます。特に、中間加速の良さは日常使いでも大きなメリットとなっており、合流や追い越しなどの場面で安心感をもたらしています。
一方で、日常使いにおける後悔の声も少なくありません。最も多いのが燃費に関する不満です。「想像以上に燃費が悪く、給油の頻度が予想外に多い」「通勤だけで使うには維持費が高すぎる」といった意見が目立ちます。特に、都市部での使用や短距離の移動が多い場合、燃費の悪さが顕著に表れるようです。
また、「街中では性能を持て余す」という声も多く、「信号待ちからの発進時に気をつけないと周囲の車に迷惑をかけそうで神経を使う」「住宅街では常にアクセルワークに気を遣う必要がある」といった意見もあります。
興味深いのは、これらの「後悔」の声を上げているオーナーの多くが、それでもWRX S4を手放したくないと考えている点です。「燃費は悪いが、週末のドライブでの楽しさを考えると許容範囲」「日常使いには少々オーバースペックだが、たまに味わえる走りの楽しさは他の車では得られない」といった意見が多く見られます。
また、長期所有しているオーナーからは、「最初は速さに戸惑ったが、慣れてくると扱いやすさを実感できる」「SI-DRIVEのインテリジェントモードを活用すれば、日常使いでも十分に扱いやすい」といった声も聞かれます。
WRX S4の「速すぎる」特性は、使い方や価値観によって「魅力」にも「後悔」にもなり得ることがわかります。購入を検討する際には、自分のライフスタイルや使用環境、そして何を車に求めるかをしっかりと見極めることが重要でしょう。
WRX S4は工場出荷時点でも十分な性能を持っていますが、さらなる「速さ」を求めるエンスージアストにとって、チューニングは魅力的な選択肢となります。ただし、チューニングには様々なリスクや法的制約が伴うため、十分な知識と責任を持って行うことが重要です。
最も一般的なチューニング方法の一つが、ECU(エンジンコントロールユニット)のリマッピングです。これにより、エンジンの出力特性や燃料噴射量、点火タイミングなどを最適化し、出力向上を図ることができます。WRX S4の場合、適切なECUチューニングにより、標準の275馬力から300馬力以上への向上も可能とされています。ただし、過度なチューニングはエンジンの寿命を縮める可能性があるため、信頼できるチューナーに依頼することが重要です。
吸排気系のカスタマイズも人気のチューニング方法です。高性能エアクリーナーやエアインテークシステムの装着により、エンジンへの空気供給量を増やし、出力向上を図ることができます。また、マフラー交換によって排気効率を高めることも可能です。これらは比較的手軽に行えるチューニングであり、音質の変化も楽しめるため、多くのオーナーが最初に手を付ける部分でもあります。
足回りのチューニングも、WRX S4の「速さ」を引き出す重要な要素です。高性能サスペンションやショックアブソーバーへの交換により、コーナリング性能を向上させることができます。また、軽量ホイールや高グリップタイヤへの変更も、加速性能や操縦安定性の向上に寄与します。
より本格的なチューニングを望む場合は、ターボチャージャーのアップグレードや強化インタークーラーの装着なども選択肢となりますが、これらは専門知識と高額な投資が必要となります。また、大幅な出力向上を図る場合は、ドライブトレインやブレーキシステムの強化も同時に検討する必要があります。
なお、チューニングを行う際には、保証や車検への影響、そして法規制への適合性を十分に考慮することが重要です。特に、排気音量や排出ガス規制に関しては厳格な基準があり、これらに違反するチューニングは公道走行が認められない場合があります。
また、WRX S4はCVTを採用しているモデルが多いため、大幅な出力向上を図る場合はトランスミッションの耐久性にも注意が必要です。CVTは高トルクに対する耐性が一般的なマニュアルトランスミッションやDCTに比べて低い傾向があるため、トランスミッションの強化や冷却対策も同時に検討すべきでしょう。
チューニングはWRX S4の潜在能力を引き出す魅力的な手段ですが、バランスの取れたアプローチと十分な知識、そして責任ある使用が不可欠です。「速すぎる」車をさらに速くする楽しみと、それに伴うリスクや責任を十分に理解した上で取り組むことが重要です。
WRX S4の「速すぎる」性能を客観的に評価するためには、同クラスの他のスポーツセダンとの比較が有効です。ここでは、WRX S4と競合する主要なスポーツセダンの加速性能を比較してみましょう。
まず、WRX S4の基本スペックを確認すると、2.4L水平対向4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力275馬力、最大トルク375Nmを発揮します。0-100km/h加速は約6.5秒、ローンチコントロール使用時には6秒を切るタイムも可能です。
これに対して、同じ日本車では、トヨタ・カムリスポーツの2.5Lハイブリッドモデルは、システム合計出力227馬力で0-100km/h加速は約7.7秒程度。マツダ6(アテンザ)の2.5Lターボモデルは、最高出力231馬力、最大トルク420Nmで、0-100km/h加速は約6.8秒とされています。
欧州勢では、BMW 330iは2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力258馬力、最大トルク400Nmで0-100km/h加速は5.8秒。アウディA4の2.0TFSIクワトロモデルは、最高出力252馬力、最大トルク370Nmで0-100km/h加速は約5.9秒です。メルセデス・ベンツC300は、2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力258馬力、最大トルク400Nmで0-100km/h加速は約5.9秒となっています。
これらの数値を比較すると、WRX S4は日本車の中では最も速い部類に入りますが、同価格帯の欧州プレミアムスポーツセダンと比較すると、若干劣る数値となっています。ただし、WRX S4の強みは単純な加速タイムだけではなく、全輪駆動による優れたトラクションと悪路走破性、そして水平対向エンジン特有の低重心による安定した走行性能にあります。
特に雪道や雨天時の走行では、シンメトリカルAWDの恩恵により、後輪駆動が主体の欧州車よりも安定した走行が可能です。また、価格面でも欧州プレミアムブランドより競争力があり、コストパフォーマンスの高さも魅力の一つと言えるでしょう。
加速性能だけでなく、最高速度の面でも、WRX S4は220〜230km/h程度と推定されており、これは同クラスの他のスポーツセダンと比較しても遜色ない数値です。ただし、日本の公道では法定速度が厳しく制限されているため、この性能差が実用面で意味を持つのは、主にサーキット走行などの特殊な場面に限られます。
総合的に見ると、WRX S4は「速すぎる」と評される理由が理解できます。特に日本の道路環境や法規制を考慮すると、その性能は公道走行においては過剰とも言えるレベルにあります。しかし、その高い性能は、安全な追い越しや合流、そして緊急時の回避能力として、安全面でのメリットももたらしています。