

ETCカードリーダーで出力した明細は、インボイス制度では経費書類として認められない場合があります。
ETCカードリーダーをパソコンで使う場合、一般的なICカードリーダーは使えません。
ETCカードには独自のセキュリティ仕様が採用されており、マイナンバーカードや交通系ICカードを読み取るような汎用ICカードリーダーでは、利用履歴データを取り出すことができません。つまり、市販の1,000〜3,000円程度のカードリーダーをAmazonで買ってきても、ETCカードの中身は一切読み取れないのです。
利用履歴をパソコンで管理するためには、ETC専用のカードリーダーと管理ソフトのセットが必要になります。現在、国内で最もよく使われているのは、デンソーウェーブ(株式会社デンソーウェーブ)が提供する「ソフトウェアパッケージ ETCPRO(品番:998003-980)」です。カードリーダー本体とパソコン用の管理ソフトがセットになっており、実勢価格は3〜4万円程度となっています。
用意するものは以下の通りです。
接続方式が条件です。ETCPROは、パソコンとのインターフェイスとしてシリアルRS-232C(D-Sub 9ピン)またはUSBポートに対応しています。最近のノートパソコンにはRS-232Cポートがないことがほとんどですが、市販のUSB-RS-232C変換ケーブルを使えば問題なく動作します。変換ケーブルは1,000〜2,000円程度で購入可能です。
なお、ETCPROのソフトウェア本体(インストーラー)はデンソーウェーブの公式サイトから無償でダウンロードできますが、専用カードリーダーなしでは動作しません。「ソフトだけ無料で使えばいい」と思っていたとしたら、それは勘違いです。
参考リンク(デンソーウェーブ公式:ETCPROの製品詳細・動作環境の確認に)。
プリンタ・ソフトウェアパッケージ – DENSO ETC2.0車載器 / ETC車載器 製品・サービスサイト
セットアップの流れはシンプルです。
ETCPROをパソコンにインストールしたあと、カードリーダーをUSBまたはRS-232Cケーブルで接続します。カードリーダーはAC電源(コンセント)を使うタイプなので、設置場所の近くにコンセントが必要です。
起動後の操作は次の流れで行います。
つまり、使い始めてしまえば操作はとても直感的です。読み込みが完了したあとは、カードを取り外しても履歴データはパソコンに保存されたままなので、必要なタイミングで印刷やファイル出力ができます。
ここで注意したいのが、ETCPROで表示される料金と実際の請求額が異なる可能性がある点です。具体的には、ETCカードに記録された料金は「料金所通過時点のデータ」であるため、後から適用される深夜割引(0〜4時:30%割引)や休日割引(土日祝:普通車30%割引)が反映されていない場合があります。口座から引き落とされる実際の金額と数百円〜数千円の差が生じることがあるため、経費精算時の金額確認には注意が必要です。
また、ETCPROで出力したCSVデータはExcelで開いて編集できるため、複数の社用車を管理する法人の担当者や、個人事業主の方が年間の高速料金を集計・管理するのに非常に役立ちます。車両ごとにフォルダを分けてデータを蓄積しておけば、確定申告や経費精算の際に一覧表として活用できます。これは使えそうです。
参考リンク(ETCPRO6の詳細な構築事例・実際の作業メモとして参考に)。
ETC利用履歴発行システム(DENSO-WAVE ETCPRO6)を構築 – jamfunk.jp
ETCカードが自動で消してしまいます。
これがETCカードリーダーとパソコン管理の最大の理由です。ETCカードには記録できる利用履歴に上限があり、一般的には最大100件程度しか保存できません。100件を超えると、古いものから順番に自動で上書き・消去されていく仕組みになっています。
100件というと多く感じるかもしれませんが、片道1回の高速利用で入口と出口の2件が記録されます。つまり、50往復で100件に達します。毎週往復で高速を使う人であれば、わずか6ヶ月ほどで最古の履歴が消えてしまうことになります。毎日のように高速を使う運送業や営業車のドライバーなら、1〜2ヶ月で上限に達する計算です。
| 利用頻度 | 100件に達するまでの期間 |
|----------|------------------------|
| 毎日1往復(2件/日) | 約50日(約1.5ヶ月) |
| 週3回往復(6件/週) | 約4ヶ月 |
| 週1回往復(2件/週) | 約1年 |
確定申告で1年分の高速料金を経費計上しようとして、カードの中身を確認したら半年分以上が消えていた——そんな事態が実際に起きています。100件の上限が条件です。
パソコンにETCカードリーダーを接続して定期的にデータを読み出しておけば、何百件・何千件分でもパソコン内に蓄積・保管できます。カード内の履歴が消える前に定期的に読み込む習慣をつけることが、高頻度利用者にとってのデータ消失対策として最も現実的な解決策です。
ETC利用照会サービス(無料)でも過去15ヶ月分の履歴をネット上で確認できます。ただし事前登録と車載器管理番号などの情報が必要です。先にこちらを登録しておくのも有効な選択肢のひとつです。
参考リンク(ETC利用照会サービスの公式サイト:無料登録で過去15ヶ月の履歴を照会できる)。
ETC利用照会サービス(公式)
カードリーダーで印刷した明細を保存しても、税務上の証明書にはなりません。
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、ETC利用に関する経費計上の書類要件が大きく変わりました。重要なのは、デンソーウェーブのETCPROで出力した明細書、SA・PAに設置されたETC利用履歴発行プリンターのレシート、いずれも「インボイス対象外」として明記されている点です。
つまり、これまで当たり前のように経費精算に使っていたカードリーダーの明細は、インボイス制度下では仕入税額控除の証明書としての効力を持ちません。厳しいところですね。
インボイス対応の書類として認められるのは、ETC利用照会サービスから発行する「利用証明書(インボイス対応版)」です。ただし、利用料金が確定する前の状態で発行した証明書はインボイス対象外となるため、料金確定後に発行する必要があります。
経費計上に必要な書類をまとめると以下の通りです。
| 書類の種類 | インボイス対応 | 備考 |
|---|---|---|
| ETCPROで出力した明細 | ❌ 対象外 | カード記録の即時データのため |
| SA設置プリンターのレシート | ❌ 対象外 | 公式サイトに明記あり |
| ETC利用照会サービスの利用証明書(料金確定後) | ✅ 対応 | ETCクレジットカード・パーソナルカード対象 |
| クレジットカード会社の利用明細 | ✅ 条件付き対応 | ETC事業者発行の証明書との組み合わせで有効な場合あり |
インボイス対応の正しい経費精算フローは「高速道路を利用する → 料金確定後(数時間〜翌日)にETC利用照会サービスへアクセス → 利用証明書をPDFでダウンロード保存」という流れです。この手順を踏めば問題ありません。
なお、2029年9月30日までの経過措置として、ETCクレジットカードの場合は一定の条件下で簡易的な対応が認められています。ただし経過措置の終了後は厳格な対応が求められるため、今のうちに正しい手順を習慣化しておくことをおすすめします。
参考リンク(ETC利用照会サービス公式:インボイス制度への対応についての公式告知)。
ETCクレジットカードを利用した高速道路利用に係るインボイスの保存について(ETC利用照会サービス)
どちらが向いているかは、使い方によって変わります。
ETCカードリーダー+パソコン(ETCPRO)と、無料のETC利用照会サービス、それぞれに向いている使い方は異なります。自分の利用状況に合わせて選ぶのが基本です。
まずETCカードリーダー+パソコン管理が向いているケースです。社用車が複数台あり、ドライバーごとにETCカードを管理している法人、あるいはフリーランスや個人事業主で車を使った仕事が多い方は、自宅や事務所にカードリーダーを置いて定期的に読み込む運用が効率的です。パソコン内にCSVデータが蓄積されるため、複数枚のカードをまとめて一括管理しやすく、Excelでの集計作業もスムーズに行えます。
一方、ETC利用照会サービスで十分なケースも多くあります。プライベートで高速道路を利用することが月数回程度の方や、スマホやパソコンから手軽にWebで確認したい方には、無料で使えるETC利用照会サービスが最適です。過去15ヶ月分の全走行明細をPDF・CSV形式でダウンロードでき、インボイス対応の利用証明書も発行できるため、個人利用では十分な機能を備えています。登録に必要なのはETCカード番号・車載器管理番号・車両番号の下4桁です。
| 比較項目 | ETCカードリーダー+ETCPRO | ETC利用照会サービス(無料) |
|---|---|---|
| 費用 | 3〜4万円(初期投資) | 無料 |
| インボイス対応 | ❌ 非対応 | ✅ 対応(料金確定後) |
| 履歴の保存期間 | パソコン内に無制限で保存可能 | 過去15ヶ月分(コーポレートは62日) |
| 複数カードの一括管理 | ⭕ 得意 | 🔺 カードごとに登録が必要 |
| リアルタイム性 | カード挿入時点でのデータ | 通行後4〜5時間程度で反映 |
| 向いている人 | 法人・多頻度利用者・複数台管理 | 個人・低〜中頻度利用者 |
法人で複数のカードを管理するなら、カードリーダー1台で社員全員の明細を事務所で一括管理できます。カード枚数が増えるほどETC利用照会サービスのID・パスワード管理が煩雑になるため、カードリーダー導入のコストメリットが出やすいです。
逆に個人でプライベート利用が中心の場合、3〜4万円のカードリーダーを購入する必要はほとんどありません。無料のETC利用照会サービスに登録し、確定申告や経費精算のタイミングで履歴をダウンロードする運用で十分です。
ETC利用照会サービスへの登録は今すぐ済ませておくのが賢明です。登録していないと、万が一の履歴消失時に対応できなくなります。登録は公式サイトから無料で行えます。

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